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お宅訪問 2
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「それにしてもさ、牧野って実は片付けられない人だったんだな。」
「え?」
不思議そうに首をかしげている牧野。
「いや、お前部屋の周り見てみろよ。」
笑いながら部屋を見渡す。牧野もつられて部屋をぐるっと見た。
「……まあ、昨日本の分別をしていた途中だったからな。」
ちょっと困った顔をしながらそう言われた。
「そうだったのか。すごい量だな。」
「ああ。」
穏やかな表情に戻った牧野を見て、少しホッとした。
「これ、全部読んだの?」
「あ? まあ、俺はいつも本ばかり読んでるからな。図書の本もほとんど読んでしまったし、新しい本が出ては本屋で買って読むってのを繰り返していたら、本が部屋に収まりきれなくなった。」
ひとつの本を取り出して微笑む。
「それ、好きなの?」
本から俺へと視線を移す牧野。
「ああ。好きだ。」
その時の表情があまりにも穏やかで、ドキっとした。
「そうだ、牧野。俺におすすめの本とかない?」
「おすすめ? お前は本を読むのが苦手なのだろう?」
「うん。まあ、苦手だけど、牧野が面白いって言うんだったら、きっと面白いと思うんだ。だから、俺みたいな奴でも楽しく読める本ってないかな?」
ぐいっと体を牧野の方へ寄せると、キョトンとした顔をされた。
「……近い。」
そしてすぐに言われたこの一言で、俺はその状況に気づいてハッとなった。
「ああ、ごっごめん。」
急いで離れようとすると、腕を思いっきり掴まれて引き戻される。
「ま、牧野?」
「ごめん。」
俺は、牧野の体にすっぽりと覆われている。
牧野の、匂いだ……
落ち着く。
体を委ねていると、牧野は俺の頭を撫でながら、顔を首に埋まり始めた。
牧野の息がかかってこそばゆい。
俺も更に牧野の方へと体を密着させる。
ドクン、ドクン
牧野の心音が聞こえてくる。
「ごめん。」
さっきから、謝る牧野。
「どうして? どうして謝るの?」
牧野に抱きしめられながら、俺は訊ねた。
少しの間のあとにくすりと笑ってこう答えられた。
「そうだな。」
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