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スパルタ 牧野先生
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学校での一日が終わった。放課後俺たちは牧野の家に行き、牧野の部屋でテスト勉強をすることになった。
なったのはいいが……
「あのー」
「なんだ?」
着くなり、教科書を広げて勉強モードになる牧野。そこには、恋人同士の甘い空気などない。ちょっとは、期待していたんだけど。
「やっぱり、勉強?」
「は?」
呆れた顔をされてしまった。
「だって、ちょっとは雑談とかでもよくない?」
「よくない。そんなんだからお前は馬鹿なんだ。」
冷静にそう言われると心にぐさりと来た。
「ほら、ノート出して。」
折れた俺の心は歯向かう力も残っていなくて、素直にカバンからノートを出した。それを、牧野は手に取って何か書き始める。
「どうせお前は今習っている範囲もあやふやだろうから、俺が基礎問題を作ってやる。」
すらすらとノートに問題を書く姿に、俺は感動する。
「すげー!」
すると、5問ほど書いて俺にノートを渡してくる。
「解いてみろ。」
「おう!」と威勢良く返事をしてノートを受け取る。が、直ぐに硬直してしまった。それを見た牧野が不思議そうに「どうした?」と聞いてくる。
「す……数学だ。」
俺は数学が一番苦手だ。だから、しょっぱなから数学が来てテンションが下がってしまう。牧野の方を見れば、メガネの奥から見える目がとてつもなく怖かったので焦ってノートに向かう。
「たった5問しか作ってないよな?」
牧野先生は笑顔でそう俺に訊ねる。俺はドギマギしながらはい、と答える。
「それで、かかった時間は?」
「45分です。」
「問題内容は?」
「因数分解です。」
「……あっけにとられてしまう程の驚異の馬鹿だな。」
「ひっひぃ……」
その時、俺は鬼を見た。
「ま、まぎのぜんぜいー」
ぜーはーと新たに渡された問題を解答して牧野に渡す。合計20問解いたことになる。久々に頭を使った俺は使い古した雑巾のようになっていた。ちなみに、牧野はピンピンしている。
シュッシュッと、赤ペンで丸をつけられる音がする。こっこれは!!!
「日坂。」
「はい! 先生!」
俺は項垂れていた体勢から一気に正座になり姿勢を正す。解答用紙は牧野の方を向けられているため、俺には結果が分からない。緊張で息が詰まりそうだ。
ドキン、ドキン
「結果は……」
「結果は?」
フッと優しい顔つきになった。
え? これ期待してもいい?
期待で目を輝かせ、牧野を見つめる。
「10問中5問間違っている。」
笑顔でそう告げられたため、俺はやったー! とつられて喜んでしまった。
「やったじゃないだろう?」
そういう牧野は笑顔だったけれども目が笑っていなかった。
あ、怖い。
「今は夜の何時だ?」
「えっと……21時半。」
「俺の家に来て何時間経った?」
「……3時間です。」
「180分/20問=9分/問、つまりお前は、因数分解を正答率1/2にするまで3時間かった。それだけでなく、最初は5問で45分を費やし、合計20問で180分、平均して9分/問。解答時間は恐ろしい程のトロさということだな……。」
ずれたメガネを右手の中指でカシャリとセットし、牧野はそう俺に言い放った。そして、盛大に大きくため息を吐いて言った。
「これはしごき甲斐がありそうだ。」と。
さらに、牧野は何か閃いた顔をして、震えて声も出ない俺に、言うのだった。
「今日、俺の家に泊まれ。」
俺は明日、干からびて死んでいるかもしれない。
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