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一日の授業も終わり、作文コンクールに代表として出す生徒達の作文も決まった。
バドミントンクラブにも少し顔をだして、家にまっすぐ帰る。
卵の残りで作ったと思われる、かきたま汁や炒り卵の入ったサラダがテーブルに並んでいるので夕食にする。
颯一はもう仕事に出ていて家には一人だ。都合がいい。
明日の準備やら何やらを終えてから、テーブルの上に作文用紙と、わざわざ買いに行った薄い緑がかった便箋を取り出した。
いい年してゲドラを毎週見ている颯一には作文用紙の方が喜ばれるかもしれないが、伝えたいことが半減される気がしたのでやめておいた。
書き始めてから約二時間。何度か書き損じをしながらも、二枚の手紙を書き終えた。
長いのか短いのかはよくわからない。
「置いておけば勝手に読むだろう」
ありがとうも愛しているも面と向かって言った時は恥ずかしくなかったはずなのに、記念日でもなんでもないのにこんな手紙を渡すのは何やら気恥ずかしくなってきた。
そのままテーブルに置きっぱなしにすると、寝る準備に入った。
*
「そーちゃん、だーいすき」
「うん、ぼくもだーいすき」
「おーきくなったら、けっこんしようね」
「おとこどおしはけっこんできないって、にいちゃんがいってたよ!」
「やだぁ!!そーちゃんとけっこんするのー!!そーちゃんがおよめさんじゃなきゃやだー!」
「わかったよぉ。そーまくんのおよめさんになるよぉ」
「うん!!!うれしいなぁ!!あのね!」
*
小学校教師の朝は早い。
恐ろしい昔話を夢にみて飛び起きた朝は、いつも通りの支度が思うようにできなかった。
適当なワイシャツとネクタイを身に付けてリビングに向かうと、もうすでに廊下に匂いが漂っていた。
リビングのドアを開けて中に入ると、颯一は何処にもいなかった。
ただ代わりに、キッチンのコンロの上に業務用鍋がドンと置かれていた。
中身は私の好物であるビーフシチュー。
「いや…これを朝からはキツイだろ」
昔からこうだ。
何か嬉しいことがあると、私の好物を大量に作って用意してくれる。
少しだけ更に盛ってパンを浸しながら食べようとテーブルに着くと、そこにはびっしり文字の埋められたゲドラの作文用紙。
奏真へ、と書き出しの作文用紙は裏までビッシリと書かれていた。
昔から見慣れた文字が綴る内容に頬を緩ませながら、この大量のビーフシチューを処理するために、職場の先生でも招待するかなと考えながら家を出た。
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