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蝉と車
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中学2年の夏。
あの日から俺は、半分だけになった。
「なぁ菊池!今日ひま?」
「今日?」
帰りの会が終わり、バックを背負うと、同じクラスの羽田 鉄平が尋ねてきた。
「ひー…ま!」
「俺んち来ねぇ?この間のゲームの続きしようぜ。」
「えーでもお前んちの母ちゃん、ゲームばっかやってると容赦なく怒んじゃん。俺とかにも。」
「大丈夫大丈夫!今日母ちゃん、職場の人とお茶飲みに行くらしいから帰り遅いって。」
「そうなの?そんなら行こっかな…。」
…いやほんとに鉄平んちの母ちゃんは、冗談抜きでおっかない…。
「あ、そうだ。たっちゃん、お前も今日ひま?」
…げっ!
たっちゃんって……まさか…。
鉄平が誘った相手は…やっぱり。
……春夏冬 達治。
「今日?…別に、なんもねぇけど。」
「まじ?ほんじゃ俺んちでゲームしよ!菊池も来るけど。」
「……ちっ。」
は…はぁ!?い、今舌打ち…!
「な、何でこいつも誘うんだよ!」
「だってたっちゃんゲーム上手いんだもん。この間だって俺が倒せなかったボスを5分もかけずに倒したんだぜ?」
「いやでも「それに、人数多い方が楽しいじゃん?はい!つーことで、俺んちへレッツゴー!」
だ…だからって…何もこいつじゃなくても…。
「…。」
「な、何だよ。」
「…俺もお前と遊ぶなんて吐き気するほど嫌だわ。」
こ……こんのぉ………死ねっっ!!!
「つーか今日暑ぃなぁ…家ついたら、後でアイス買いに行こうぜ。」
鉄平は、バックから下敷きを取り出し、ベコベコと音を立てながら仰いだ。
…まぁ、そんなんで涼しくなるような暑さじゃねぇんだけど。
「あー蝉うるせー!」
「お前の方がうるせぇ。」
「あ!?んだとこの天パァ!」
「お前らほんっとに仲良いね。さすがはデコボココンビ。」
「「コンビじゃねぇっ!」」
…俺と春夏冬は、知らない間にクラスのみんなから、仲良しこよしのデコボココンビにされていた。
…多分、俺がちっさくて、このクソ天パがでかいから…デコボコ……。
………くそー腹立つ!!
「誰だよ、そんな風に言い出したやつ。」
「え?俺だけど。」
「「…お前かよ!」」
「すげぇ!息もぴったり。」
「〜〜〜っ!」
息なんて合ってたまるかよ!
こんなにムカついて、こんなに嫌いで、こんなに気の合わないやつなんて、こいつぐらいだっての!
「ていうか、羽田んちってこんな遠かったっけ。」
春夏冬は、額に浮いた汗を拭いながら尋ねた。
…ほんとに暑い…今日何度だよ…。
「もう少しだよ。あそこの十字路の信号渡って右んとこ。」
「あー、そういや見覚えあるわこの道。」
「家ついたらクーラーガンガンに冷そー。」
そんなことをぶつぶつと呟きながら、赤になった信号を待った。
「うっわ、ティーシャツびちょびちょ!」
車が、道を沿って走る。
「シャワーはさすがに貸さねぇからな?」
蝉の声と、車のエンジン音が、耳にへばりつく。
「お前の部屋汗臭さくなるなぁ。」
信号が、赤から青になる。
横断歩道に、一歩足を踏み出す。
「……え…。」
横から、信じられない速さで、黒い車が飛び出してきて…。
「菊池!!!」
ピンポーン。
「? はーい!」
インターホンが鳴り、洗濯物を取り込もうとしていた菊池 玖美は、手を止めて玄関へ向かった。
「どちらさま…あら、春夏冬君じゃない。」
「…っはぁ……はぁ……っ…おばさん…。」
「どうしたの?そんなに息切らして。」
「……はぁ………き、菊池が……っ。」
「え?」
「……
英君が……車に轢かれて…っ。」
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