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吸血鬼狩り
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「ミチルくーん」
「……ゼル」
「ゼルさま!あのね、ちゃんとミチルさまに血をあげたよ!」
リーファは僕の上から飛び跳ねて、ゼルの元へ駆け寄っていく
ゼルは駆け寄ってきた少女の頭を撫でて僕には向けないような笑顔で微笑んでいた
「さて、ミチルくん」
リーファを腕に抱いたゼルがこっちに来る
「仕事だ」
「…わかった」
僕らがやってきたのは、人間の世界
今までいたのは吸血鬼が作った……なんていうかな、異空間?
いや、空間は同じだから……なんて言うかな、まあとりあえず人間が簡単に入れない場所
そんな感じのとこだった
「あそこの廃ビルに、人間の子供を誘拐して血を貪っているヴァンパイアがいるらしい」
「そんなの、ゼルが勝手に始末すればいいだろ…」
「そんなわけにないかないよー。ヴァンパイアとなった君を育てるのは、拾ってきた私の役目さ」
「っ、よく言うよ。そんな責任があるなんて言うなら、御影の元に帰して。そしたら自由だろ」
「それはできない。君たちは私たちの脅威になりかねないからね」
「脅威ってなに」
「それはまだ教えないよ。さ、行くよ」
時刻は夜
ヴァンパイアの活動時間
12階ほどのビルの壁を駆けながら降りて行き100メートルくらい先に走って向かう
「さ、行くよ」
廃ビルの前で一度止まり、ゼルは僕の表情を確認してからビルの扉を蹴り破った
ビルの奥に進むにつれて、血の匂いが濃くなる
気持ち悪…っ
「な、なんだ?!」
口元を真っ赤にした男は、片手に男の子、片手に女の子を抱えていた
二人の子供の首筋には、忌まわしいヴァンパイアの噛み跡
「貴様を処刑しに来た。人間の土地で勝手に吸血行為をすることは法律で禁じているはずだ。知っていなかったのか?」
男は子供を地面に置き、一瞬のうちに僕の後ろに回り込んだ
僕の首筋に長く鋭い爪をあてがい、ゼルを脅す
「知ってるさ!あんたら上級貴族が俺らみたいな一般吸血鬼の飢えなんて考えもせずに作ったお気楽規則!俺はそんなの無視してやるよ。だって知ったことねえからな!飢えには逆らえないのがヴァンパイアだ!」
「……」
これだからヴァンパイアは嫌いだ
自分でも驚くほど冷静だ…
首に突きつけられた爪が食い込んで、僕の血が流れた
「……っ、この血…」
僕の血の匂いを嗅いだ男は、すっと爪をしまって跪いた
「失礼いたしました。我らが主人」
「は……?」
いきなりの態度豹変に驚くしかない
ちょっと待て、今なんて?
意味わかんない
主人?僕が?ヴァンパイアの?
疑問たっぷりの眼差しでゼルを見る
ゼルは「あ」と素っ頓狂な声をあげた
「ねえ、主人ってどういうこと?」
跪いた男のためにしゃがんであげて、男の顎に指を当てて顔をこちらに向かせる
目をじっと見て、男の答えを待つ
「そ、それは……あなたの血が……っぐあっ!?」
男が答えようとした瞬間、目の前でチリになった
「そこまで。答えは聞かせられないよ。言っただろう、まだ教えないよって」
ゼルの瞳が煌めく
怒ってる
あまり感情を表にしなかったゼルが怒ってる
僕は弾けた際にかかってきたチリを払い、立ち上がる
「…うっ、えーん」
子供の鳴き声がして振り向く
さっき血を吸われていた子供たちと、それから別にもう10人ほど出てきた
「もう怖い人はいないから。ちゃんと家に帰るんだよ」
僕は子供たちにそう言って、ゼルのほうを見る
「さあ、今日の狩りはまだあるよ。今度はもっと西のほうだ」
……血ってなに
血が、何かだというなら
それを知るまではここから逃げられない
同じ血が流れる御影のために
僕は先に行くゼルの後を追った
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