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2ー07
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経立とは長い年月を生き続けた生き物が妖力を得て、妖になったモノだ。
こんな人里に降りてくるなんて滅多に無いし…明らかに様子がおかしい。
その様は妖気が邪気に蝕まれ、興奮しているというより苦しんでいるように見えた。
もしかすると、大猪の意思に反して暴走しているのかもしれない。
余り乱暴な手は使いたくないが、被害が出てる以上放っておくわけにはいかない。
まずは…と思考した瞬間、大事な事を思い出した。
しまった!数珠をザクロの馬鹿に使ったままだ…くっそ、こんな大事な時に!
フゴォォォォォーッ!!
「!!」
地響きと共に、雄叫びを上げた大猪が俺に向かって突進してくる。
悩んでいる時間はない…!
一か八か、ズボンの後ろポケットから呪符を取り出し、呪を唱える。
頼む、間に合ってくれ…!
だが無情にも大猪の突進は俺の想像より遥かに速く、一気に間合いが無くなる。
ダメだ、衝突する…!
そう思った瞬間だった。
「うわっ!?」
突然身体が宙に舞上がり、勢い良く地面から遠ざかる。
バサッと翼が羽ばたくような音に驚いて振り返れば、コウモリのような漆黒の翼を生やした半裸の淫魔…ザクロが俺を抱きかかえ、涼しい笑顔で笑っていた。
「あっぶないなー」
「ザクロ!お前どうやって…!」
「章人の術解くのに大分妖力使っちゃった。いやー間に合って良かったね」
まるで全て知っていたかのような口振りに怪訝な顔をすれば、ザクロは困ったように微笑む。
「これでも慌てて駆け付けたんだから、そんな顔しないでよ。コレ、必要なんじゃない?」
「!」
数珠を差し出され、ぎこちなくそれを受け取る。
畜生…コイツに借りが出来てしまったのは非常に悔しいが仕方ない。
するとその時、宙に居る事である考えが脳内を過ぎった。
その方法なら大猪に接近し易い。
けどそれには、コイツの協力が必要だ。
そして俺は、意を決してザクロに視線を向ける。
「…ザクロ、このまま俺を大猪の上に投げ飛ばしてくれ」
「え?!」
「…頼む」
俺の突然の要望に、驚いたように瞳を瞬くザクロ。
それに一瞬戸惑いが見えたけど、俺の心情を察してくれたのか…クスリと小さく笑った。
「分かった。ちゃんと加減しないとね…!」
そう言って俺を投げる体勢に入ったザクロ。
それが合図のように俺は数珠を構え、刀指を唇に当て印を結ぶ。
タイミングを探して相手の動向に注視していると、視界に入る大猪は俺に向けて威嚇するように大口を開けた。
「今だ!」
勢い良く投げ出された俺は五芒星を切り、大猪の額に数珠をあてがい、言霊を叫ぶ。
「破邪退散!」
全身から放たれた青白い気が大猪を飲み込み、邪気のかなぎり声が光の柱となって弾け失せる。
そして大猪は低く唸りながら大きな音を立て、その場に崩れ落ちた。
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