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相談とピンチ
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帰り道、夕暮れの光を背中に浴びながらちらほら辺りに見える学生らを一瞥して五條を見る。彼はとぼとぼと歩いていたがやっと口を開いた。
「なあ兵藤」
「ん?」
「ちょっと相談なんだけどさ」
ふいに顔を上げた五條と目が合う。すっと通った鼻筋とぱっちりとした切れ長の目に影を落としながら俺をじっと見つめる瞳から真剣な訴えを感じた。黙って頷けば五條は決心したように再び唇を動かす。
「俺さ…弱くなったっぽい」
「弱くなった…って、どういう」
「…力が出ないんだよ…筋肉が衰えたというか…。前できたことが確実にできなくなったんだ…それも、突然」
そういって自分の手を見つめ掌を握ったり広げたりを繰り返している。最近悩んでいた理由はこの事らしい。
確かに端から見ても近頃の五條の不調は著しかった。下を向いて考えていると、いきなり五條が歩くのを止めたので顔を上げれば横断歩道の向こう側に他校の制服を着た複数の男子生徒が意地悪そうな笑みを浮かべて立っていた。
髪は日本人本来の色ではなく赤や青やら金髪やら。派手な装飾品にルーズに着用した制服から明らかに不良の集団だと感じ取れる。
嫌な空気を感じながらまじまじと観察していると、隣にいた五條が「やべぇ!」と声を発し、俺の腕を掴んでもと来た道を疾走して引き返し始めた。
すると後ろから不良集団の声が聞こえ、追いかけてくる足音や間を通った車のクラクションがあたりに鳴り響く。一体どういう事だろうか。
とりあえず五條の後を追って走る。そして手前にあった中華料理店の角を左折して住宅街へ入った。
右へ左へ曲がりながら迷路のような道を奥へと走っていくと、とうとう行き止まりにぶち当たってしまう。
前方は家の裏側でコンクリートの壁が行く手を塞いでる。引き返せば逃げてきたあの集団と出会ってしまうかもしれない。
息を切らしながら五條はやっと俺に説明してくれた。
「あいつら…ずっと前に俺がぶっ倒したんだけど…多分、仕返しに、きた…長良田高のチームだ…」
「え」
「今喧嘩したらまずいな…巻き込んですまん…お前はどっか、逃げるか…隠れてろ…壁の、向こうとか…」
汗を拭いながら前髪を掻き上げた姿に思わず見とれていたがハッと我に返って俺は首を振って否定した。
ここで去るわけにはいかない。だってさっき弱くなったという相談を受けたばかりじゃないか。あんな大人数相手に弱くなった五條がやりあったら結果がどうなるか俺にだって分かる。
「逃げるなら一緒に」
「………俺は逃げねぇ。…どうせ逃げてもどこまででも追いかけてくる奴らだ。結局どっかでケリつけねェと」
「弱くなったって言ってたじゃないか…」
「大丈夫。…それに…本当に弱くなっちまったのか試したいから」
何が大丈夫なんだか、と言いたいが頑固な五條をどう説得しても無駄なのはよく分かっている。
それに彼は自分が弱くなってしまったことを理解しているつもりでも、頭のどこかで納得しきれていないのだ。仕方のない事だ、今まで最強無敵だったのだから。
しかし些か己の力を過信しすぎているように伺える。クラスメイトである五條の事を一体どれだけ知っているのかと問われればぐうの音も出ない。
それでも役に立てるかは分からないがダメージは2で割った方が幾分か良い。
結局、側にいて参加することにした。五條もそれを認めてくれたらしく何も言わなかった。数分後、タイミングよく足音が聞こえたかと思うと先程の集団が俺達の前に現れた。
人数はさっきの半分。どうやら俺達を探すために二手に分かれたらしい。ちょっとラッキーだ。と言っても相手は4人。
俺よりデカい奴が1人、俺より小さくて五條より大きい奴が2人、五條より小さい奴が1人。
油断はできない。
頭の中は恐怖よりもどうやってこいつらから五條を庇いきるかでいっぱいだった。
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