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冗談じゃない
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side五條
否定の言葉を即答したら目の前で突っ立っていたこいつは若干面食らった顔をしたがそれは一瞬の事ですぐにいつもの無表情になった。
冗談じゃない。
ちょっと俺様が弱くなったからって、調子に乗ってんじゃねえ。と笑ってやりたいが今の自分にそんな余裕は無い。
兵藤直人は俺のダチで、ダチは全員護る対象だ。
自分でも胸を張れるくらい物心ついた時から強かったから、俺の事を気に入らない奴が鬱憤を晴らそうと散々手を出してきた。
そしてやり合う度に大切な人達にも迷惑がかかることを理解してきた。その人たちを傷つけず喧嘩に巻き込まない。それがモットーで、孤軍である理由だ。
だけども理由も分からずいきなり弱くなっちまった俺は、どうやらショックで心まで軟弱になってしまったみたいだ。
心の拠り所が欲しかったから、信頼できるダチについ相談という名の火種を撒いてしてしまった。
兵藤とは常日頃から一緒に居るわけでは無かったけど、側にいて心地いい存在。こいつは決して多くを語らないが、コッチの言うことを全部聞いてくれる、優しくて責任感の強い男。
秘密を明かしても決して他には漏らさないし約束も絶対に守ってくれる。短い付き合いだが他にいるどんな奴より信用できると思った。だから、つい、俺の弱さで巻き込んでしまったんだ。
寡黙な兵藤がこんだけ喋って普段おとなしい兵藤がこんだけ動いてくれて、アホな俺だってこの行動が優しさからきてるって事は分かる。
同情されたって事も。
一度甘えたら最後、今の状況では近い未来がどうなるか目に見えてる。きっと兵藤が俺を痛い目に合わせたくないと思っているのと同時に、俺だって兵藤を痛い目に合わせたくない。できる事なら遠ざけて、守りたい。
この件には関わって欲しくはなかった。けれど関わらせてしまったのは他でもなく自分自身だ。
だから答えは見えてる。
オブラートに包んで申し出を断る方法を知っていたらどれだけ良かったか。
「さっきはマジで助かった、…ありがとな。でも、もう俺に、関わんな」
「…五條」
微かに首を振った兵藤の眉尻が下がった。俺は、表情のバリエーションが少ないこいつの感情を読み取ることができる数少ない人間だ。
その瞳が何を訴えているのか分かっているから余計に切ねぇ。でも駄目だ、この賭けは危険すぎる。
「やっぱ、これは俺の問題なんだ。手伝ってくれるのは今回が最初で最後だ」
「でも、相談してくれただろう…」
「…相談するべきじゃなかったのかも」
「それでも、力に、なりた…!?」
そう言いかけた兵藤が猛スピードで近づいて来て俺の背中を押し倒した。前のめりに倒れ何事かと起き上がってみればさっきまでいた場所に細い鉄パイプが振り下ろされていた。
誰にも当たらず地面にガツンと叩きつけられたそれはまた空を切って持ち上げられる。
兵藤は俺が怪我をしなかったか確認し安堵の表情をしていたが、すぐさま眉根が寄せられパイプを持つ人物を睨みつけていた。
再び命を助けられた、この借りを返すには一体なにをすりゃ良いだろうか。
「五條くんみーつけたァ」
ぞろぞろと周りを囲んできた数人の男たちの後ろから白と言っていいほど見事な金髪を輝かせた男がもったいぶった歩調で出てきた。
ブリーチで何回も髪色を抜いたであろう不気味な金髪を持つ男を俺は知っている。
けれどこいつは、
「敦…!なんでここに…お前長良田高じゃねーだろ、」
「愛しの五條くんが弱くなったと聞いていてもいられなくなってさぁ。今だけ、長良田高のメンバーの方々に入れてもらったんだっつーの」
ワックスで立ち上げた髪を手櫛で整えながら満面の笑みを浮かべ、脳みそが痒くなる様な声音を発しながらずいっと近づいてくる。
くそッ…いつも俺の周りに現れ邪魔をしてくる目障りな奴!この世から抹消したい人物堂々のベストワン。
昔っから大ッッッッッ嫌いだった。
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