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延長戦
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一斉に男たちが飛びかかってきた。しかし中央にいた金髪男はその場を動かないでこちらを嘲笑っている。
何故だ、と意図を探る余裕も無くあっという間に囲まれてしまう。俺の前には2人の男。空を裂いて鉄パイプが飛んできて、咄嗟に手を翳せば腕にガツンと衝撃。痛いどころでは無い。
「っツ」
ズキズキと泣き声を上げる腕を押え相手を睨めば憎たらしい笑みがこちらを見返してくる。彼らは武器を携えていた。卑怯だと、視線で訴えれば伝わったのか鉄パイプの表面を擦りながら相手が答えた。
「五條を潰すにはこれぐらい用意しねーと意味ねェんだよ!」
今度は両者がこちらへ攻撃してくる。すぐ近くにいる五條を心配する余裕は無かった。
鉄パイプの男の懐に潜り込んで全力で体当たり、よろめいた隙にすかさず腹に拳を食らわせる。そして棒を奪い取った。
ヤバい、と焦った男は顔を強張らせこちらを見上げるが、申し訳ないと心で謝り先ほどと同じ場所にもう一度蹴りを埋め込ませる。
息つく間もなく次の敵の攻撃をパイプで受け止めた。接触した個所からはグン、と鈍い音が伝わり振動が手を震わせる。
しかし、武器を得た俺には勝機があった。幼い頃からずっと握っていた竹刀の感覚が蘇る。
必死で角材を振り回してくる相手に踏み込み力を込めて右方向へと受け流した。簡単に男の手から離れた角材はカランカランと虚しく音を響かせて地面へと落ちる。
武器を失くした敵の眼前にパイプの先端を突き付ける。
「っ、うわっ」
無意味に相手を傷つける必要も無い。さっさと消えろ、と促せば男は一目散にこの場を走り去った。
それを見て見ぬ振りをし、行動を起こさない金髪男の前を警戒しながら五條の元へ向かう。
この男は一体何を考えているんだ。
喧嘩しようぜ、と言った割には指先ひとつ動かしていない。
五條は飛んでくる攻撃をかわすだけで精一杯の様だった。彼を今にもバットで叩こうとする太った男の背後から膝裏を思いっきり蹴り飛ばしてやる。
膝カックンは誰にでも効くものだと、納得しながら隙を見てバットを奪い五條の方へ転がした。
「五條!」
「おっ!」
なんとか受け取った彼は助かった、と残りの敵と対峙した。そして自分は不機嫌そうに腕を鳴らす太った男に向き直る。
なめた真似しやがって、と唸った男から重い拳が胸元へ飛んできた。弾きかえすが、衝撃が傷ついた腕に響きパイプを落としてしまう。
「ッ!」
「ふん」
拾う暇も与えず次々とパンチを浴びせてくる。対処し切れずバランスを崩しふらついた体が地面を付いた。
「しまった、」
「ふん、」
相手が踏むのではなくてわざわざ屈んで殴りに来てくれたのが不幸中の幸いだった。届くかと、精一杯脚を伸ばせば爪先が見事男の顎に命中した。音もなく膝を着いた相手の肩を倒して転がす。
今のは危機一髪。
冷や汗を拭って立ち上がれば、息を切らして五條が近付いてきた。彼の体にはあちこち掠り傷があったが、無事で何よりだ。
「よかった、」
と息をついた瞬間、後ろから「ふうん」と鼻を鳴らす声。
油断していた存在を思い出させたその吐息は何故か耳元に直に響いた。
「っ、」
認識が追いつかない。振りかえれば見事な金髪が視界に入る。ヒュっと喉が詰まり鳩尾にしっかりと食い込んだ衝撃が全身を襲った。
気がつけば後頭部に冷たいコンクリートの地面が当たって、視界に入ったのは夕焼けの空。
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