アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
人質確保
-
ぐずぐず悩んでる暇はねぇ。目の前の宮古に「出るぞ」と耳打ちをして扉の方へ2人並んで向かう。首に腕をまわした状態は歩きにくく不格好だが人質として物凄く価値の高い男がいるから簡単に逃がすわけにはいかない。
こいつが抵抗しないのが一つ引っ掛かるが今は気にしていられねえ。暴れられる前に廊下に出ればいいだけのこと。
「開けろ」
カメラを持っていない方の手で宮古がドアに手をかける。少し開いた所で先につま先を入れて力任せに横へ蹴った。ガタンと荒々しい音をたてて扉が開く。念願の一歩を薄汚い廊下へ踏み出したと同時に後ろへ振り返れば少し離れた位置に七山が迫っていた。一瞬の隙をも見逃さないと群がるファービーとダンディーへ嫌味たっぷりに叫んでやる。
「追いかけたり下手な真似すんなよ…?分かってんだろうな」
言うが早いが俺は人質を引きずって一目散に走った。さほど嫌がることもなくついて走る総長の後ろから「待てこらァ!」と散々野次やら暴言やらが飛んでくるが追い掛けてくる奴はいない。ナイス俺、さすが俺、出来る俺。
なんて内心はしゃぎつつひとまず来た道を引き返していれば中央階段から多数の足音が降りてきた。
目の前に飛び出で来たのは嬉野で、その後ろから各々武器を携えたマックスメンバーが次から次へと現れる。
「総長!」
「…お前ら…」
そういえば、こいつらに待機しろって言ってたんだった。まったくタイミングが良いのかそうでないか少し戸惑っていると黒の金属バットを右肩に担いだ嬉野は申し訳なさ程度に頭を下げた。
「すんません、待ってろって言われたけど総長があまりにも遅いから、殴り込みにいこうと思って…我慢できなくて…」
あれからどれくらい経ったのかは分からねえがこいつを叱る理由なんか無い、かわいい後輩じゃねえか。むしろ好都合だ。
顔を上げた嬉野は俺の返事を聞く前に腕の中にいる宮古を見つけるなり堂々と指差した。
「あっ!コイツッ、ファービーの総長じゃないっスか!?」
その一声に後ろにいたメンバーがざわつくと同時に殺気立つ。「さすがっす!!」と賞賛喝采に「成り行きで」と曖昧な相槌を返しておいた。しかし俺達の格好に気づき怪訝になる彼らに慌てて誤魔化す。
「それより総長、一体中で何が…」
「ちょっと捕まりかけたが…なんとか逃げてきたんだ」
「捕まったって…?」
「いや、」
あの事がバレたらとんでもない。宮古が漏らしてしまはないかと肝を冷やすがどうやらこいつは睨むだけで口を利く気は無いらしく杞憂に終わった。
「まあ詳しいことは全部後だ。嬉野、こいつの持ってるカメラ取れ」
嬉野が宮古の持っていたビデオカメラを引ったくったのを見て丁寧に分かり易いように言いつける。
「いいか、それを原型がなくなるまで粉々にぶっ潰せ」
「うっす」
「絶対にファービーに渡すんじゃねえぞ」
「うっす」
素直に頷いた嬉野は何が撮ってあるのか聞きもせず足元にカメラを転がすと早速その場で持っていた金属バットを振り下ろした。まったく、持つべきものは何とやら。
ガッシャンガッツンと破片が飛び散り無残に解体されていくカメラの音を聞きながら残りのメンバーに引き返せと命令して散らせる。これ以上この場にいさせたら後方で殺気立っているファービーと今ここで闘争になりかねない。とりあえず対秋ノ宮、七山の打倒策を考えなくちゃな。
どうしてもついて来ようとする嬉野達をまたもや押し切りとりあえず別棟にいる先生達の所へ向かうことにした。そうと決まって歩きだしたのは良いがこの体勢だとスゲー移動しづらい。これは計算外だったぜ。
「くっそ、さっき解かせておくんだった…」
忌々しいガムテープで固定された手首を捩っていたら今まで空気のように押し黙っていた宮古が静かに口を開いた。
「そこの階の教室に刃物があるぞ」
「え」
っと横顔を凝視したら余裕ぶった笑みとぶつかった。仮にでも人質をとる相手に手助けするような事を、と考えてこの男の真意に気づいた。こいつ、解放した瞬間逃げるつもりだ。もしくはもう一度俺をアジトに連れて行くかもしれねえ。
でもアジトに帰るなら何も俺を解放してからじゃなくても充分逃げられるだろ。なぜか宮古が捕まったまま大人しくしているだけだ。
一体何のつもりか、無い頭を使って必死に腹を探っていたらいつの間に元理科室の前に到着していた。なんてこった。
テープを解けば立場は対等だ。渋る俺に「入らないのか?」という嘲笑で意地になり埃っぽく汚い教室に足を踏み入れた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
16 / 19