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見つかっちゃった。拓海side
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告白を断ったら、しゃがみ込んで泣きだしてしまった名前も知らない女の子。
俺よりいい人見つけなよ。そう言って俺もしゃがむと。
ちゅ、と小さなリップ音と共に唇に温かな感触。
え…あぁ、キスされたんだ。
ごめんなさい、と小さく叫んで走り去って行ってしまった。
…俺がファーストじゃないから良かったものの、それ、ファーストだったらすごい罪だよね。
はぁ、とため息が出た。
くるっと回れ右をして、体育館へ行こうとすると。
体育館の陰に、人がいるのがちらっと見えた。
見られてたのか…変な噂、立たないといいけど、な…
「…鈴木くん…?」
何故か分からないけど、鈴木くんだと思った。
覗くと、すっごい固い顔をした鈴木くんがいた。
やっぱ鈴木くんだった。
鈴木くんでよかった、変な噂とか立てるような子じゃないから。
「どーしたの?委員長の仕事終わった?」
「あ、うん…」
ビクッとしてからぎこちなく頷いて、何か言いたげに俺を見てくる黒い瞳。
長めの前髪から覗くその目は入学時から変わらなくて、なんだか安心する。
俺を見ていた瞳が、俯いた影に隠れて見えなくなってしまった。
「…ごめん、盗み聞きして」
「聞いただけなの?」
小さく開いた口から、小さな声が漏れる。
聞いただけ、っていうのは、俺があの子にやられたあのキスを見られてないってことなのかな。
他意のない質問に、鈴木くんが口を結んだのが見えた。
「…見、も、した…」
「あら、見られてたか。恥ずかし。」
軽く笑うと、また俺を見上げる、瞳が揺れて、何をそんなに動揺するのかな、と思う。
別に告白や呼び出しは日常茶飯事ってことは、巻き込まれたことのある鈴木くんも分かってるはずだし。
「…大丈夫?」
「え…?」
大丈夫、って、何にだろう。
…キスされたことかな。
「大丈夫だよ」
「……そっか」
「…なんなら、鈴木くんがちゅーしてくれる?口直ぶっ!!」
微笑んで、大丈夫だと口にすると、少し安心したように肩の力を抜いた。
堅苦しい空気が嫌でふざけると、容赦のないグーパンチが飛んできた。
「寝言は寝て言えタラシ野郎!!」
「ちょっ、ひどい!俺タラシじゃないよ!」
心配して損した、と頬を膨らませて踵を返してしまった。
門へ進む鈴木くんに、ありがと、と言うと顔だけ振り返ってまたそっぽを向かれた。
優しい子。
女の子に自主練の時間を潰されちゃったけど、もう片付けの時間。
俺は体育館へ戻った。
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