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泣いたのは
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「え、じゃあ…おでこくっつけて話してただけ?」
「うん」
「ちゅーじゃないの?」
「ちゅーじゃないの」
「なんだぁー」
安心したように笑う成宮。
冷静になって考えると、おでこくっつけて話す状況も普通じゃないんだけど、成宮は気にしてないみたいだからそこには触れない。
「俺、見ちゃいけないとこ見ちゃったと思ってさぁ、すげー焦ってすぐ隠れて…」
「それは、うん…ごめん…」
声かけてくれればよかったのに、と思ったけど、あんな状況じゃ声なんてかけられないな、と思い直して、なんか申し訳なくなる。
(ていうか、あれ見られてたのか…)
くっっそ恥ずかしい。
真山は本当、なんですぐああいうことしてくるのかな…。
「…なぁ、藤川」
「ん?」
「さっき、ちゅーしてないのはわかったけどさ」
「うん」
「その…真山とは付き合って」
「ねぇよ」
「!?本当に付き合ってないの…!?」
「だから、それはあいつらがからかって言ってるだけで…」
「マジで?なんだぁーよかったぁー!」
「よかった?何が?」
「だって、付き合うことになったよって俺に言ってくれないんだーと思って、めっちゃ寂しくてさぁ…」
は?それって…
「…お前もしかして、それであんなに泣いてたの?」
「…別に、それだけじゃないもん…まぁ、それもあるけど…」
「…………」
寂しがりやにも程があるだろ、と思ったけど、なんか申し訳なくて、何とも言えない気持ちで成宮を見た。
「だって、俺だけ仲間はずれなのかなって思ったらすげー悲しかったんだもん!そんな目で見んなよ!」
「だからって泣くか普通?」
「うるさいばーか!」
拗ねてしまった成宮の頬をつねる。
いひゃい、と言って、不思議そうに俺を見た。
「…本当にそんなことになったら、お前にちゃんと言うから」
「え……」
「仲間はずれになんてしないから、拗ねんなよ」
「…藤川……」
また涙を浮かべて、ぎゅっと抱きついてくる成宮。
電車の中だからやめてほしいんだけど、やたら力が強くて離れてくれる気がしない。
「ありがとう、藤川すき…」
「うん。いったん離れようか」
「やだ」
「なんでだよ…いや、待って今日俺バイトだから!もう降りるから!」
「やだぁぁああ!」
「やだじゃねぇよ!」
抱きついてくる腕を、無理やり剥がして立ち上がる。
マジでバイト遅刻したら洒落にならない。
「じゃあな成宮!」
「もー!ばいばい!」
「なんで怒ってんだよ…」
最後までわけのわからないまま、成宮と別れて電車を降りた。
ぐだぐだだったけど、別れ際に嬉しそうに笑ってたのを思い出して、つられて小さく笑った。
すぐに、バイトがんばってねって送ってくる成宮。
バイトがんばろう。
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