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行かないで
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「…ねぇ、藤川」
「ん?」
「もう帰っちゃうの?」
「え……」
びっくりした。
確かに、そろそろ帰らなきゃって思ってたけど……
「…なんで?」
「…なんとなく」
ちょっと寂しそうに呟く真山。
つられて、俺まで寂しくなる。
「…もうちょっといようか?」
「ううん、いいよ。ありがとう」
小さく笑って、ぽんぽんと頭を撫でられる。
やっぱり、どこか寂しそうだ。
「…明日も、学校で会えるからさ」
「そうだね」
「泣かないで、真山」
俺も真似して頭を撫でる。
真山が楽しそうに笑う。
「泣くわけないだろ」
「だって、笑ってるのに寂しそうなんだもん」
「藤川と一緒にしないでよ」
「はぁ…!?」
くっそムカつく、なんだこいつ。
せっかく心配してやったのに…!
「…俺が泣き虫だって言いたいの?」
「そうだよ」
「…………」
くっっそ。
腹立つ。
すげー腹立つ。
「……もう帰る」
「え、待って」
慌てて俺を抱きしめる真山。
そのまま、俺の首筋に顔をうずめた。
俺を引き止めて、甘えるような姿は、ちょっと可愛いと思ってしまう。
(…冗談のつもりだったんだけどな…)
真山は、やっぱりどこか寂しそうな雰囲気で。
そっと背中に腕を回す。
「…ごめんね。怒った?」
「…怒ってない。ごめん」
細い体を、ぎゅぅっと抱きしめた。
ほっとしたように、真山が小さく息をつく。
「……まだ行かないで」
小さな声に、胸が締め付けられる。
あやすように頭を撫でながら、耳に唇を寄せる。
「…大丈夫だよ。まだ行かない」
俺が、いつも真山に安心させてもらってるみたいに。
俺も、真山を安心させられてるかな。
「…ほんと?」
「うん、ほんと」
「ちゅーは?」
「…………」
ちゅっとほっぺにキスをする。
正面から顔を見られてるわけじゃないから、まだ恥ずかしくない。
「ふふ、ありがとう」
嬉しそうに笑う真山。
すげー可愛いから、さっきのはこれでチャラにしてあげよう。
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