アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
手掛かり
-
「ただいま。あれ?…じいちゃん?」
玄関を入ったばかりの孫が、キョトンとこちらを見ていた。
いつもは閉めている襖が開きっぱなしで、ガラクタの中に座り込んだままの自分を晒していたらしい。
「…ああ、もう、そげな時間になったか。」
のっそり立ち上がる信吉へ、寿哉が話し掛けた。
「今度、商工会でね、懐かしの我が町ってタイトルの写真展をやることになったんだ。」
「ほぅ…。」
「そのキッカケがね、とあるブログに出てた古い写真で。ここの祭りを撮ったものだったらしいんだ。」
―古い写真。
信吉の頬がピクリと引きつった。
「ねえ、じいちゃんも協力してよ。勿論、写真はちゃんと返すから。」
「あ、あぁ。そうじゃのぅ。」
いつにない、頼り無さに、不安げな声がその背を追ってくる。
「じいちゃん、…どうかした?」
「どうもせん。何にも、ありゃせん。」
確かに自分はひどく動揺している。
だが、別に実際に何かがあった訳ではない。
―心配かけとうない。
「もう、寝る。」
ピシャッと閉めた襖の内側で、信吉はいつかの兄の気持ちを知った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
46 / 48