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きっと余程の、心配事があったのだろう。
あの日、帰宅した兄は、顔色を無くしていて
それでも
どうにか、自分に微笑もうと…
「何でもあらへん。」
「ホンマにか?」
「ああ、ホンマや。」
短く返事をすると、取り繕うように立ち上がり、今の自分と同じく、逃げるように襖の向こうへその身を隠した。
―兄ちゃん。
ホンマは何があったと?なんで、俺に言わんかったんじゃ!?
信吉は、その場にしゃがみこんだ。
―俺には言えん事情があったと?
何故か唐突に、あのフィルムを現像してみよう、そう思った。
「寿哉。」
襖を開け、孫を呼ぶ。
「じいちゃん、なに?」
「これ、やる。中身は年代もんのフィルムじゃ。」
「えっ!?貰っても、良いの?」
「何が写っとるかも判らん。捨てるのを忘れておっただけのもんじゃ。」
ありがとうさえ言わせないまま、またピシャリと襖を締めた。
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