アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
甘い誘惑
-
お風呂から上がるとテーブルの上に美味しそうな夕飯が並んでいた
「わぁ!凄い…!聖夜くんこれ全部作ったんですか?」
「そんな大袈裟だろ」
「美味しそうです!焦げてないなんて驚きです!」
「…………」
いつも自分が作ると必ず焦がしてしまうのに聖夜くんのはとても美味しそうで感動が止まらない
「…綺月さん普通は焦がさない」
「うぅ………はい…」
「まあとりあえず飯くおうぜ?こっちおいで綺月さん」
聖夜くんがお椀にご飯をよそって先に歩いてく
振り返り笑顔で呼んでくる姿に胸がドキドキした
「「いただきます」」
二人でソファに座って遅い夕飯を食べ出す
見た目も味も本当に美味しくて
聖夜くんはなんでも出来る子なんだなと思った
「聖夜くんは本当に凄いですね」
「夕飯作ったくらいでそんな褒められると恥ずかしいな」
「ふふっ今度は聖夜くんが料理してる姿見たいです」
「いくらでも作るよ」
幸せな気持ちが溢れてきて自然と漏れた言葉に聖夜くんがそう言ってくれる
何だか未来の約束を自然と出来る事がとても幸せだと思った
「聖夜くん紅茶飲みますか?」
「俺やるよ」
「夕飯作って貰いましたし私がやりますよ!」
ご飯を食べ終わり少しして食器を片付けるついでに紅茶をいれる
2つティーカップを持って聖夜くんの元へ行くと少しだけ眠そうな顔でお礼を言われた
「ありがと綺月さん」
「いいえ」
ほんの少しだけ空いて座っている距離が何だか寂しい
くっつきそうでくっつかないこの距離がまるで今の私達みたいに思えたから
「綺月さん?」
「あっ、何ですか?」
「いやボーとしてたから眠いかなって」
「大丈夫ですよ聖夜くんこそ眠そうですけど」
「昨日ちゃんと寝れなかったからな少しだけ眠いかも」
そう言った聖夜くんが眠そうに目を擦る
何だかその仕草が可愛くて自然と笑みがこぼれた
いつも年下なのにそんな風に全く見えない聖夜くんが今隣でこんなに緩い素顔を見せてくれるのが嬉しい
「ん?なんかついてるか?」
「ふふっいいえ、聖夜くんも可愛らしいところがあるんだなって」
「なんだよそれ」
「褒めているんですよ」
ふっと笑う聖夜くんはやっぱり
大人に見えるけどでも聖夜くんは私よりも幾つも年下なんだと思うと不思議な感じだ
「もう遅いですし寝室行きます?」
「ん」
うとうとしている聖夜くんの肩を揺すってそう聞くと小さく返事が聞こえた
学校ではいつもハキハキしている会長の彼が眠くなるとこんなに可愛くなることを知って胸がぎゅっとなる
聖夜くんのこんな顔を見れたことが嬉しい
寝室に行くと聖夜君は何も言わず布団へと潜っていった
「あ、聖夜くんはベットを…」
「嫌ここでいい」
「お布団の方が落ち着きますか?」
「ん……てより…ベットは……綺月さんの匂い…するから……」
「えっ」
「…だから……こっちの方がいい…」
相当眠たかったのか最後の方はうまく聞き取れないくらいに小さな声で聖夜くんは直ぐに眠ってしまった
気持ちよさそうな表情で眠っている聖夜くんに布団をちゃんとかけなおすと私もベットへと寝転びこちらを向いて眠る彼を眺めて目を閉じる
だんだんと眠気が襲ってきて私も眠くなってきた
だけど何だか寝るのが勿体なくて下にいる聖夜君を見つめふと腕を伸ばす
伸ばした手を聖夜くんの綺麗な長い指へと絡めてみるとじんわりと暖かな温度が伝わってきた
「…暖かい」
眠ってる聖夜くんの寝顔が愛しくて目の奥がじんわりとする
初めて好きになった人なんだと思って改めて聖夜くんを見つめると何だか涙が溢れそうになった
難しい恋愛をしている
今はまだ難しい恋愛
時が経って彼が卒業をしたとしても
いつか私は邪魔になるんじゃないかな
男同士で恋をするってことを
きっと聖夜くんはあまり深くは考えていない気がするから
やっぱり身を引くべきだったのに
私はあの日結局聖夜くんから手を引けなかった
挙句に彼の前で泣き出してしまったし…
歳上としての尊厳も何もないなこれじゃ
はぁ、と自分の頼りのなさに肩を落としため息が溢れた
「……聖夜くん、俺ね、聖夜くんに好きになってもらえて嬉しいよ」
気が緩んでいるせいか自然と口から俺と言葉が漏れる
泣いたときも確か言っちゃって慌てて隠したけど聖夜くんにはバレていた
どうしてか人と話すときはいつの間にか「私」
っていうようになったこの癖も聖夜くんの前では飾ることなく「俺」に戻ってしまうらしい
「……聖夜くんのピアノ好き……もっと他に伝えたいことがあるけど…ごめんね俺からはいつも何も言えなくて…」
そこまで口にすると心の中が悲しくなってきた
たった一言を一度口にするだけで抑えが効かなくなりそうで怖い
その言葉で彼を縛ってしまいそうで怖い
いつか彼が私に抱いてる気持ちが魔法みたいに解けるような気がして怖かった
くっつく事のないこの距離がもどかしくて寂しくて繋いだ手の温もりだけじゃ足りない
「…………起きちゃ、ダメだよ」
寝ている聖夜くんにそう声をかけて、横になっていた体を起こして立ち上がると下で眠る聖夜くんのお布団の中に入り込む
何だかいけないことをしているみたいでドキドキして仕方ない
聖夜くんが起きる前に…ベットに戻ろう…
自分にそう言い訳して普段なら絶対にくっつけない聖夜くんに自ら抱きつく
ふわっと優しい匂いがして胸の奥がきゅーと締め付けられた
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
38 / 57