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手のひらから始まる …1
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時刻はすでに夕方近く。
昼飯が早かったせいか小腹が空いた俺は、途中見つけたフードコートでハンバーガーを食べた。
雅治さんは食欲がないとかで、コーヒーだけ。
でも、その休憩がよかったのか、雅治さんの顔色は、さっきと比べるとだいぶ良くなった。
その後、チケット売り場に行くと、夕方からのお得なペアチケットを勧められて、それを購入。
ペアだって。
男同士でも使っていいのかな?うふふ…なんて、内心一人興奮しながら水族館に入った。
男二人で水族館って…なんだか恥ずかしいけど…
周りもだいたいカップルだからか、雅治さんに声をかけてくるような女性はいなかった。
俺たちは、特に会話もなく思い思いにのんびりと水槽を眺めて歩いた。
たまに、同じ水槽の前にボーッと立って「綺麗だね」とか「変な顔」とか、ポツポツ感想を言う。
ってゆーか、どうやら俺も、内容をあまり覚えてなかったらしい。
こんなのあったかな?みたいな水槽がいくつかあった。
そういや、俺もあの時、河野さんと雅治さんの事が気になってたんだった。
ここを去るのが惜しいかのように、ゆっくりと回る雅治さんに合わせて、俺もゆっくりと歩く。
何だか、とても幸せな時間。
それが過ぎるのが辛いほど。
メインの水槽を見終わって外に出た時は、もう日が落ちて辺りは暗くなっていた。
「わ…日が落ちると寒いね」
別館のイルカミュージアムに向かいながらそう言うと
「温めてあげようか?」
なんて言って、雅治さんがそっと俺に寄り添うようにして歩き始めた。
外は暗いとは言え、街灯もあるし人の目もある。
「も、もう!」
本心は、くっ付きたい。
だけど、必死に取り繕って雅治さんから離れる。
雅治さんがフッと笑って、俺の耳に顔を寄せた。
「じゃ、後で温めてあげる」
「っ…っ!」
もう!
この人は突然なんてことを言うんだ!
あー熱い!
おかげで熱くなりました!(特に顔が!)
そうして、イルカミュージアムに到着。
中に入ると、思わず「わぁ!」と声が出た。
前回来た時とは、全然雰囲気が違う。
陽の光がない今、照明だけが水槽を照らしていて、なんとも幻想的な光景が広がっていた。
入ってすぐのアーチ型の水槽の下は座れるようになっていて、カップルが数組座っていた。
もう閉館間際だからか、人は少ない。
ゆっくりと水槽の下を雅治さんと並んで歩く。
そう言えば…
前回はここを通って…
この先の円柱の水槽で雅治さんと…キス…した。
懐かしい。
って言うか、恥ずかしい思い出。
河野さんの前で、キスするなんて…
あぁぁ…
火照る顔を見られないように、雅治さんの少し後ろを歩いた。
ライトを反射してキラキラと揺れるトンネルを過ぎると、思い出の…円柱型の水槽が現れた。
雅治さんと一緒に、グルリと円柱の周りを歩く。
何もいない?と思ったら、前に見た白イルカが下からスイッと上がってきた。
「あ…」
俺たちに「いらっしゃい」とでも言うように、俺たちの前に止まってくれた。
その後は、元気にクルクル動き始めた。
雅治さんが奥の壁に寄りかかったので、俺もその隣に立ってイルカを眺めた。
ふと、あの時のことが懐かしく思い出されて、自然と頬が緩む。
「何を…考えてる?」
雅治さんが、ボソッと呟いた。
「いや…キレイだなーって…」
「うん」
俺の返事に、雅治さんが小さく相槌を打つ。
「ふふっ…あと去年、ここで、色々やらかしたなぁ…って」
「あぁ…」
また、雅治さんが小さく相槌を打った。
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