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7日目
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「いらっしゃいませー!」
もうバイトも1週間入ってたら、慣れたもんだ。最近はお客さんを観察する余裕なんかもあるし。
店長なんか、お前が入ってから女の子の客が増えたなんて喜んでる。そんなんで喜んでるから彼女できないんだよ。
そろそろアメリカンさんがご来店する時間。毎日だいたい同じ時間に来るってことは、仕事終わりって事なのかな?髪長いし、やっぱりアパレル関係?羨ましいな。
あんな若いおしゃれな人が、たくさんあるチェーン店じゃなくて、こんな古いカフェに来るなんて、よっぽどここを気に入ってんだね。
カランコロン。ドアに備え付けられたベルが優しく鳴る。きっとアメリカンさんだ。あの人、そーっと優しく開けるから、来たら一発でわかっちゃうんだ。
「いらっしゃいませ!」
いつもの席に着くと思ったら、今日のアメリカンさんは何故かカウンターの方にのそのそと寄ってくる。
心なしか疲れ気味に見えるアメリカンさん。糖分足りてないのか。
「あのさ、昨日はありがとう。...チンジャオロース。うまかったよ。」
「ほんとですか!」
「うん。ほんとに。料理上手なんだね。」
作った甲斐があった。
「手、出して。」
アメリカンさんは、ちょっとだけ眉を下げながら、カウンター越しに骨張った掌を差し出してくる。お手?アメリカンさん、まさかの関西人なの?
「はい?」
「...いや、ちがうちがう」
ちょっと溜め息をつきながら、アメリカンさんの反対の手がゴソゴソとポケットを弄ったかと思ったら。
次の瞬間には俺の手に、ぐしゃぐしゃにシワのいった小さなビニール袋に包まれているピアスを乗せてくるアメリカンさん。
「...これ、」
「ピアス。お礼にと思って。気にいるかわかんないけど。」
まじで。ただのチンジャオロースで?どんだけいい人。
「開けて言いですか!?」
思ったよりも嬉しかったらしく、でっかい声が出てしまった俺。箱の中には小さなスタッズのピアス。
なにこれ......超 お 洒 落 !
「やばい、うれしい!毎日つける!ありがとうございます!」
「あー、ほんと?よかったわ。あ、それとさ...」
「あ」
「...なに。」
「俺ピアスあいてない。」
「......」
「......」
そーなんだよね。あまりにも俺好みのデザインで、穴あけなきゃ装着できないことをすっかり忘れてた。
何故かさっきから遠い目をしてるアメリカンさんが、ようやく発した言葉に俺は狼狽えた。
「別のものにして返すわ。」
「あ、いいです、あけますあけます。」
「え」
「あけます」
「あ、......うん。」
なんか変な間があったんだけど。やっぱ疲れてる?今日はショートケーキだな。
ピアッサー買わなきゃ。
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