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妖怪化学 8
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「みんな、ありがとう。でも俺、大丈夫だから」
シーンと静まり返る校庭に、俺の声がただただ、響く。
「....若葉」
遠慮がちに飛んでくる稜の声を無視して、話を続ける。
「みんなを巻き込みたくないんだ」
ギュッと手に力を込めると、また、稜の声がした。
「...もう遅いよ」
え、?
そう思い、思わず稜の顔を見ると、稜は優しく笑っていた。
「僕らと友達になった時点で、若葉の負けだ」
澄んだ稜の声が、胸に染みる。
明るい笑顔が、不安を打ち消す。
「僕と阿久津は、確かに弱小妖怪かもしれない。でも、僕たちだけは、必ず若葉の側にいるよ。約束する。」
「ねぇ〜俺も仲間に入れてってばぁ〜。若葉ちん、俺も〜!!おれもだよぉ〜。俺、一応犬神だし、それなりに強いんだよ〜」
嘘泣きをしながら腕を握ってくる呼詠に、思わず笑みが零れる。
よしよし、と頭を撫でると、ハッ!と驚いた顔で、呼詠は顔をあげた。
「わ、若葉がデレたぁ〜!」
「デレた言うな」
ペシッと頭を叩き、そのまま一歩下がる。
髪を撫でるように、優しい風が吹く。
肩まで伸びたきつね色の髪の毛が、サラサラと流れていく。
硝子に映るのは、二本のツノ。青色のような、緑色のような不思議な色をしたそのツノが、俺はもう人間じゃないと教えてくれた。
「ありがとう」
そう言うと、微笑み返してくれる稜と呼詠。
フンッとそっぽを向く阿久津に、それを見てあらあら、と笑う楠先生。
俺は、この学園に来て、こんなにも大事にしなきゃいけないと思える人ができた。
なんて、しあわせな事だろう。
全てを捨てて、それでもこの人達を守らなきゃいけない。
守りたい。
俺は、強くならなきゃいけないんだ。
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