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動き出す闇 5
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「ほらほらぁ、大事な腕が無くなるねぇ」
食い込む爪、流れる血、曲げられた腕。
「ンクハハハ!!ッかわいいねぇ、食べちゃいたいよ。いい匂いだなあ」
耳元で、男が言ったその言葉に、ビクッと肩が震える。
右腕に食い込む男の爪の力が、更に強くなる。
男の腕を抑えていた左腕も、奴に捉えられる。
「ウ、グ、ァあッ!!!」
痛い、なんてもんじゃない。
生暖かい血が、腕を伝う。
男の息が、首を掠める。
「ゥウァ...ッ」
ペロリ、と舐められた首筋が、ぞわぞわと暴れ出す。
痛みと、羞恥と、恐怖。
「ンハハッいいねえ!!!いいねえ!!!」
興奮した男が、首筋に歯を立てる。
やばい、死ぬ。
牙がブツッと嫌な音を立てながら、皮膚を食い破る。
「ァ、ガァアアッ、う、ぁッ!!」
目の前がチカチカする程の痛みと同時に、身体から力が抜けていく。
やべ...、これ、血飲まれてんの?
頭、クラクラする。
ぼやける視界の中で、泣きじゃくる稜の姿が見えた。必死で俺に手を伸ばしていて、それを楠先生が止めている。
楠先生はこの状況でもうわかってしまったんだ。
この壱組の生徒では、この男に敵わないと。
楠先生でさえ、足元にも及ばないと。
稜を止めてくれてありがとう、楠先生。
呼詠、阿久津。
生きてるよな?
虚ろな世界の中で、悲痛な声が、微かに聞こえた。
それは愛しい人の、俺を呼ぶ声。
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