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とまらないおれ
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ぽろぽろ。ぽろぽろ。
涙が、止まらなかった。
気づいたら、建の手をぎゅう、と強く握りしめながら泣いていた。
建は優しく頬を撫でながら、泣くなよ、と小さくわらった。
建は、どんな気持ちでおれのそばにいたんだろう。
どんな気持ちで笑っていたの。
…どんな、気持ちで、おれの名前を呼んでたの?
「黙ってたことは、悪いと思ってる」
ぽたぽたと落ちてくる涙でズボンが濡れていく。唇を噛んで必死に堪える。泣くな、泣いちゃだめ。…いちばん泣きたいのは、建なんだから。
「…ごめん」
建は謝らないで。
うん、うん。大丈夫、泣いてない。うん……うぁ、うぅー、だめだ、だめ。止まらない。待って、もうちょっと、
「血出るから噛まないの、ほら」
唇に建の親指があたる。力をゆるめて顔をあげたら、ふわっと笑って頭を撫でてくれた。そして、スッと立ち上がる。
「…ぁ、」
そんな建の腕をとっさにつかんだ。…また、どっかに行ってしまうような気がして。
「タオルと水、取ってくるだけだから」
再び頭を、今度はクシャクシャっと撫でられた。…う、ぁ、イケメンヘアが、台無しじゃん。どうすんのよ。もちろん、建が直してくれんなら、ゆるす。
「おまたせ」
「…ありがと、」
「泣き虫まきちゃん」
「あー、建がいじわるー」
「はは、ごめんごめん」
おれは同じ場所で体育座り。建はおれの正面にあぐら。
「ケンケーン」
「ん、はい」
建の手を握るのは、もうクセみたいなもので。無意識に握ることが多くなった。なんか、落ち着くっていうか、まあ、そんな感じ。
「ねぇ…建はさ、つらくないの?おれが、忘れてる…とか」
直接反応は見たくなかったから、建の指を目で数える。
「…おれだったら、無理、だよ…、泣く」
「こら、泣きそうな顔すんな」
そう言われておでこを両ヒザにつけて顔を隠す。また、泣きそう。…建、建はどうしてそんなに強いの?
「あ、おまえっ、おい」
「…あ゛ぁー、うぅー…だめ、だぁ」
「あーもう…、ほらこっち向いて」
「けん、」
ぎゅうう
建に飛びついて、強く、つよく抱きしめる。少し驚いたような声とふっと笑う声。建はゆっくりとおれの背中に腕を回してくれた。
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