アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
カレカレ事情 帰宅 : 榎笠
-
笠井side
通学路を二人で歩く。
こういう関係になってから、一緒に帰るのは習慣化していた。……いや、こういう関係になる前も、一緒には帰っていたか。
隣で笑うこいつも、四年前とは大違いだ。
「どしたの、篠ちゃん」
「ぇ…、ぁ、あぁ、何でもねぇよ」
ずっとこいつを見ていたのか、?を浮かべられた。
「にしても、朝に登校って辛いね」
「そうだな」
欠伸をしながら言う蒼に、俺は軽く笑いながらそう答えた。
「高校も、今年で最後だし…」
「だな。案外一年って早いもんだ」
「受験もあるしね」
「あああ、やめてくれ。一番聞きたくない単語だった」
落ち込む俺に、蒼はクスッと笑う。
「僕達、出会って何年目かなー?」
唐突な話に戸惑いながらも、考える。
「あー、四年、か?今年で五年目だな」
「そう思えば長いよね」
「そうだな」
答えると、蒼は俺を見てふふっと笑った。
何なんだよ、こいつは。
そう思って睨むと、ごめんごめん、とあまり心の籠ってない謝罪が来たので、取り合えずしばいた。
「~~~っ、相変わらず痛いね」
「渇を入れてやったんだ。んで?」
「ん?」
「ん?じゃねぇよ。人の顔見て、笑った理由を聞いてんだよ」
「おや、篠ちゃんかって僕の顔見てたでしょ?」
「俺は笑ってねぇから良いんだよ」
良いから話せ、と促すと、そうだねぇと言い、話し出した。
「僕達、付き合って何年?」
「は?」
また、何だよ急に。
「…三年、か?」
「そうだね。じゃあさ、僕が告白したのは何年前?」
それを聞いて、最初は?を浮かべていた俺も、漸く理解する。
カアアア、と顔が日照って赤くなるのが分かった。
「ふふっ、ホント、篠ちゃんは可愛いんだから」
クイッと顎を持ち上げられ、気付いた時にはキスされていた。
「~~~~っ!!」
「ご馳走さま~♪」
「こんのっ、馬鹿!!ここ、外だぞ!?」
「あれ、怒るとこそこなの?」
はあ?何言ってんだよ。それ以外に何があんだよ。
そう言うと、思いっきりため息をつかれた。意味わからん。
「……それで?何でまた、そんな懐かしい話をしたんだよ」
「んー、ほらさ、こんな時間があるなら、僕は一年間待った甲斐があったよねって思って」
「そうか?」
「そうだよ。今までの中で、あの時が一番長い一年間だった気がするしね」
あの時は、本当にドキドキしてたなー、と笑う蒼。
まぁ、確かにあの時はすげぇ悩んだわ。
『好きだよ』
そう、こいつに告白されたのは〈四年前〉。
そして、俺が悩み悩んだのが一年。
つまり、こいつは告白して一年も俺の返事を待っていたわけだ。
「ねぇ、篠ちゃん」
「何だよ」
「僕といてくれてありがとね」
そう言って、微笑む蒼。俺は、こいつの心からの、こんな笑顔が大好きなんだ。
俺は蒼の顔に触れて、言う。
「本当に、心から笑うようになったな。蒼」
出会ったあの頃とは、本当に大違いだ。
「……篠巴の、お蔭だね」
蒼はそれだけ言うと、俺の手を握った。
「よしっ、篠ちゃん、これからデートしよっか!!」
「はあ!?」
「良いでしょ?」
あぁ、全くもう…。なんやかんやで、惚れたら負けなのかもな。
「分かったよ」
そう、答えるしかねぇじゃねぇか。
辛いなら、泣いてくれたって良い。
その時は、お前の傍においてくれ。
俺は、お前の逃げ場で良いから。
だから、辛そうに笑うなよ。そんな、泣きそうな顔で笑うなよ。
お前が望むなら、いつだって傍にいるから。
だから、その笑顔を、なくさないでくれ。
いつまでもお前を愛すよ、蒼。
これまでも、これからも―――。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
8 / 95