アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
真琴side ⑧
-
内山は、俺の告白を聞きながら どう思ってるのだろう。表情からは読み取れない。
俺は 丁寧に思い出しながら、話を続けた。
匠が好きだと思った。でも気付いたのが遅すぎた。俺は昨日 彼女が出来てしまった。彼女に対して不誠実な態度は取れない。俺は 必死に匠を頭から追い出した。でも そんな事する必要は無かった。
匠は俺から離れていった。
最近、匠が学校に余り来なくなった 、
遅刻も増えたらしい 、
違うクラスの俺にまで その噂は届いた。
駅前で不良みたいな人達と喋ってたとか、ラブホから出て来る所を見たとか 色んな噂が飛び交ってる。
一体 どうしたんだろう……。
凄く気になるし、心配なのに 俺は匠にメールの1つも出来ずにいた。俺の知っている匠じゃなくなったみたいで 事実を知るのが怖かったんだ。
学校でも匠を見掛ける回数が ガクンと減った。休み時間に覗いても滅多に居ない。居ても机に伏せて寝ていたり。
匠から離れようとしたのは俺の方なのに 匠から距離を取られるのが とても辛かった。
明らかに俺は匠に避けられてた。
2年の3学期も終わりに近付いた頃、いつもの様に彼女を家に送っていた。
『鮎川君。』
彼女が真剣な顔で俺を呼び止めた。いつの間にか彼女の家の前を通りすぎていたみたいだ。
『あっ、ごめんね。家 通り過ぎちゃったね。』
『鮎川君、あのね、その……その……。つ、付き合うの、もう終わりにしよう?』
『えっ……。』
『あ、あのね、私ね、鮎川君の事 好きだよ?1年の時から 委員会が一緒で ずっと見てきたよ。鮎川君は誰に対しても優しくて、こ、こんな私にも 皆と同じ様に優しく接してくれて。それでね、鮎川君の事 ずっと見てきたから 私、分かっちゃったんだ。』
『あ、あの……。』
『ううん、誤解しないで?私、鮎川君と付き合えて 本当に嬉しかった。鮎川君はいつも私に誠実でいてくれようとしたでしょ?ほ、他の女子が話し掛けて来ても 2人きりにならない様にしてくれてたのも知ってるの。』
『……。』
『鮎川君、今まで付き合ってくれて 本当にありがとう。もう私の事は気にしないで 本当に好きな子の所に行って?」』
言葉が出て来なかった。
彼女には全て分かってたんだ。
付き合った最初から 俺は他に好きな人が居た事も。
今 俺の頭の中に自分じゃない誰かが居るって事も。
この時になって俺は初めて自分のした罪の重さに気が付いた。匠にばかり気を取られて 彼女をおざなりにしていた。学校の帰り 家まで送ったり、休みの日にデートしたり、そんな事で俺は彼氏の役目を果たしたつもりでいたんだ。
違う人の事を考えてる彼氏と どんな気持ちで一緒に居てくれたんだろう……。謝りたいけど 言葉が出て来ない。何を言っても 安っぽく聞こえると思った。
こんな最低な彼氏で 本当に申し訳無かった。
告白を受けたから 頑張って好きになろうとした。
でも その事自体 間違いだったんだ。本当に彼女に対して誠実でありたいなら、自分の気持ちに気付いた時点で 正直に謝って 付き合いを解消するべきだったのに。
告白してくれた時には目に涙を浮かべていたのに、今日 彼女は最後まで笑ってサヨナラを言ってくれた。きっと、俺が 好きな人の所に行きやすい様に。
俺は、別れ際に 彼女に深く頭を下げて言った。
『本当に申し訳ありませんでした。謝って許される事じゃないけど、心から謝罪します。こんな俺と付き合ってくれて 本当に有り難う御座いました。』と。
彼女は笑って手を振ってくれた。
「その彼女に 背中を押して貰って 告白しに行ったんだ。それが今の……、いや、昨日まで恋人だった人。」
「鮎川……。」
「男なんだ。恋人だった人は。彼女じゃない。彼氏だったんだ。」
内山は、面食らった様な顔をした後、両手で顔を覆い、天上を仰いだ。
何か小さく呟いたみたいだけど 聞こえなかった。
「鮎川、俺っ……。いや、やっぱり いい。もう分かったよ。うん、お前の気持ちは充分 伝わった……。」
様子がおかしい?どうしたんだろう。
内山の反応が 予想を大きく外れた事で 俺も一世一代の告白をしたにも関わらず 以外と冷静でいられた。
俺は 内山に告白しながら 改めて自分がどれだけ匠を好きか 思い知らされた。
別れたばっかりなのに、辛いハズなのに、自分が匠を好きな事を辞めないとハッキリ覚悟を決めただけで 何だか頭がスッキリした様な気がした。
「驚いただろう?今まで黙っててゴメンな、内山。」
「いや、うん、だから それは もういい。」
「内山……。」
「なあ、俺の話も聞いてくれるか?」
今度は内山が目を細めた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
13 / 51