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20話
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「あら?そーなの?おめでとー」
多喜と2人で俺の家に帰ると母親がリビングでお煎餅を食べながら昼のワイドショーを見てた
典型的な主婦の姿そのものである
休日のはずの父親は接待ゴルフで不在だった
接待だと言い張りながら毎回良い賞を貰ってくるのでそこそこ本気を出してるのが伺える
父親が不在なのは仕方ないのでこの際母親にだけでも伝えようと、多喜と2人で母親の向かいのソファーに腰掛ける
其れなりに緊張もした
多喜もこんな気持ちだったのかな?とか考えた
ー多喜と付き合う事になりました
勇気を振り絞って伝えると母親から返ってきた凄くあっけらかんとした言葉
まじで意味を理解しているのか疑うレベルの即答にこっちが呆然とすらしてしまう
多喜の両親の反応は理解出来る
前から多喜が伝えていてくれたのだから心構えも出来ていただろう
しかし自分の母親のこの態度はどうなのだろう?
「母さん?えっと…ジョークとかじゃないからね?」
確認してしまうのも仕方がない
「分かってるわよー!しかし、本当に多喜君みたいなイケメンをゲットするなんて…母さんそっちの方が驚きよ?」
「ありがとー恵さん」
「多喜君本当にうちの子で良いの?親の私が言うのもなんだけど…」
混乱する俺を置いて多喜と母親が楽しそうに会話をしている
「俺はしょーちゃん一筋なんだよー」
「多喜君は相変わらず翔悟の事大好きなのねー!本当微笑ましいわ」
テンポ良く進む会話に取り残される当事者の俺
反対はされないだろうなって言うのは母親の性格を考えれば予想は出来ていたけれど、実際予想通りの言葉も有難く頂いた訳だけど…ちょっと肩透かしを食らった気がしないでもない
まぁ多喜も母さんも笑ってるから深くか突っ込まなくても良いよな…と自分に言い聞かせる
「でも、多喜君の初恋が無事に実って良かったわね?その相手が翔悟なのが役不足だけど」
笑いながら乏してくる母親に若干イラっとするのは気のせいだろうか…
「ちょっと待った!」
「何よ?突然大きな声出しちゃって?」
「あ、ごめん…って、そうじゃ無くて!何で多喜が俺の事…す、好きだったって知ってんの!」
「やだわぁ!そんなの多喜君を見れば一目瞭然じゃない!あんたの事いっつも恋する乙女みたいな顔で見つめてるんだもの」
「え⁈」
「と言うのは冗談で」
「冗談かよ!」
「多喜君に高校入学する少し前に相談されたのよー!それで、多喜君の熱い目線の意味にお母さん気付いちゃったの!」
「熱い目線の件は事実なんだ⁈」
「こんな、何処にでも居る普通な顔した息子に惚れるなんて冗談かと思ったりもしたんだけどねー」
「何気無く失礼だな、おい」
余りの言いように逆に清々しささえ感じる
隣で多喜がしょーちゃんは和風美人だよ!なんて男からすれば全く嬉しくない斜め上なフォローをしてくれるのが逆に悲しい
「もしね、翔悟も多喜君の事が好きだって言うなら私もお父さんも反対はしないって決めてたのよ?
ただでさえ障害も多いでしょうから、家族だけは絶対に味方でいたいじゃない?」
「母さん…」
優しく笑う母親の言葉に若干感極まってしまう
「それに!多喜くんみたいなイケメン逃したらあんたに今後性別問わず恋人になってくれる人なんて現れないかもしれないじゃない?」
「おい!色々と台無しだな!」
さっきまでの感動を速やかに返して頂きたい
十中八九こちらの方が本音である事は疑いようの無い事実だ
ただでさえ凡庸で存在感の薄い俺の隣には常にキラキラと光り輝くイケメンが居るのだ
生まれてこの方恋人も居なければ告白も片手で足りる位にしかされた事も無い
そもそも異性をあまり好きになると言う事がよく分かりもしなかったので特別に意識した相手も居なかったのだ
決してモテ無い言い訳では無いと声を大にして言いたい
「まぁ、何はともあれ良かったわね?」
至極能天気な一言で俺の一世一代の大宣言は何とも尻すぼみに幕を閉じたのだった
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