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33話
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放課後早川さんを連れて校舎の案内をする
最初は同性のほうが良いだろうと思って断ったんだけど、早川さんは読書が好きだそうで図書委員の俺に頼んできたらしい
…いや、しかし申し訳ないけど別に読書が好きで図書委員な訳では無いので特に図書館の案内も何も無いのだけど
学校の方針で部活動または委員会のどちらかに所属しないといけないので活動の少ない図書委員を選んだだけだ
因みに多喜も同じ理由で体育委員をやっている
体育祭前後は忙しいけどそれ以外は全く活動が無い人気の委員会だ
運動神経が良いからって言う謎の理由でクラスの女子から推薦されていた
…同じ委員会の女子生徒枠が更に倍率が上がってたのは言うまでもない
中学時代の多喜はバスケに打ち込んでたけど進学してからは部活には入っていない
素人目から見ても上手だったから止めるの勿体無いんじゃ無いかって言ったら、泣く泣く身長伸ばす為に俺と遊ぶ時間削って部活してただけ!…らしく今思えば相当愛されてね?とか思って胸の辺りがムズムズする
早川さんを案内しつつ三階から順に軽く説明しながら校舎全体を回り終わった頃には軽く小一時間経過していた
思ってたよりも学校って広いんだなって今更な認識
隣を歩く多喜が待てを命令されてる犬みたいに「まだ?まだ終わらないの?終わったらいっぱい構ってね!」みたいな目を向けてくるので早川さんには申し訳ないが最後の方はかなり駆け足で説明してしまった
まぁ更に詳しく知りたければ他のクラスメートに聞くだろう
「大体案内出来たと思うんだけど早川さん大丈夫そう?」
「うん!分かりやすい説明だったから大丈夫だと思う
篠原君も芹澤君もありがとう」
「どういたしましてー!それじゃ俺達は帰るから早川さんも気を付けて帰ってね」
「あ、うん!それじゃまた明日」
「バイバーイ」
多喜と二人で早川さんに挨拶して校門のところで別れた
外はまだ明るいし学生もチラホラ居るから送らなくても大丈夫だろう
早川さんとは通学路が反対方向みたいだし、多喜とゆっくりしたいなって言うのが本音だったりもするので早く家に帰りたい
並んで歩きながらこの後どうするか話してると後ろの方から悲鳴が聞こえた
何だろうと思って振り返ると早川さんが男の人に手を引かれて車に無理矢理乗せられようとしていた
周りに居る学生も何が起きてるのか分からずに困惑してて、気付いたら考えるよりも先に体が動いていた
「早川さんどうしたの?」
早川さんの手を掴んでる男の人がここら辺じゃあまり見ない様な派手な服装をしてるからちょっと怖いけど…転校してきたばかりのクラスメートをこのまま放っておく事も出来なくて声を掛けた
「あ?何お前?」
男の人が俺を睨んでくる
…ガラ悪いなぁ
「あ、俺その子のクラスメートなんですけど…悲鳴が聞こえたから」
「うるせぇな!俺は千夏に話があんだよ!」
「えっと、知り合いみたいですけど早川さん困ってるみたいだし手を放してくれませんか?」
「お前に関係ねーだろ?あっち行ってろ!」
男の人がイライラした様子で手を振り上げてきた
あーこれ殴られるかな…とか考えてると背中に温もりを感じて振り下ろそうとしてる男の人の腕を誰かが捕えた
顔を見なくても分かる
多喜が庇ってくれたんだ
「おにーさん何してんの?」
あ、これは完全に怒ってるな
「お巡りさん呼ばれたいなら別に良いけどさ…嫌なら今すぐ目の前から消えてくんない?目障りなんだけど」
いつもの多喜からは想像出来ないくらい冷淡な声で…美形って怒るとまじで迫力あるななんて考えていた
多喜の登場にさっきまで捲し立ててた男の人が怯んだようで掴まれてた腕を振り払って舌打ちをして車で走り去って行った
「しょーちゃん!大丈夫だった?ケガしてない?」
多喜が直ぐさま目の前に来て確認してくる
「あの人何?しょーちゃんに触れようとするとか有り得ないんだけど!そもそもしょーちゃんもしょーちゃんだよ!自分からトラブルに首突っ込んで行ってケガでもしたらどうするの?今回は俺も一緒に居たから良かったけど殴られそうになってるの分かってるのに避けないし!自分が殴られて済むなら良いや…とか思ってたんでしょ?こんな綺麗な顔に傷でも残ったらどうするの?だいだいねしょーちゃんに…」
「多喜!落ち着いて?俺ケガしてないし、ね?」
多喜が心配してくれてるのが分かるから愛あるお説教は甘んじて受けたい所だけど何せ校門前の人が行き交う往来である
騒ぎを聞きつけて人が集まってきたし、このまま多喜のお説教が続くととんでもないことまで口走ってしまいそうなのでクールダウンさせないと
「多喜さっきはありがとね」
身を呈して守ってくれた多喜にお礼を言うと、まだ言い足りないって顔した多喜の肩を軽く叩く
話は後で聞くからって気持ちも込めて
わざと殴られようとしてたのもバレているみたいだし帰ったら絶対に注意されるよな…こう言う時お互いの考え方理解し過ぎてるのも考えものか…なんて思ってしまう
「えっと…早川さん大丈夫?」
当事者である彼女に声を掛ける
気が抜けたみたいな顔しているけど、余程怖かったのだろうか
「あんまり詳しく言いたくないなら言わなくても良いけど、さっきの人は以前住んでいた所の知り合い?」
余計なお節介だと困るので一応確認してみると早川さんは小さく頷いた
「うん…前から付きまとわれてて困ってたの…まさかここまで来るなんて思わなかったから…」
「付きまとってたって事はストーカーか何か?」
「…うん…そんな感じ」
「そっか…警察に相談とかした方が良いのかな」
「あの…!そこまで事を大きくしたくなくて…全く知らない人って訳じゃないから」
早川さんがちょっと困った様に俯くのであまり突っ込んだ話を聞くのも憚られる
でもこのまま「じゃあまた明日」って別れる訳にも行かない
先程から俺と早川さんのやり取りを黙って聞いていた多喜の顔を見ると、仕方無いなって言いたげな顔
やっぱりお見通しなんだろうなって苦笑してしまう
「家の近くまで送るよ?今一人になるの不安でしょ?」
「えっと…でも迷惑じゃない…かな?」
「このまま帰したらそっちの方が心配するから」
早川さんが上目遣いで俺と多喜の顔を交互に見る
多喜も俺の意見に賛成って意味で軽く頷いたので早川さんも納得してくれてようだった
…今日は色々と疲れたな
…早川さんを送り届けたら多喜のお説教か…いや俺が悪いから仕方ないんだけど…ああ言う時の多喜は本当に怖いんだよな…いつもはフワフワした話し方なのに…すっげぇ淡々と話すんだもんな…流石親子ってくらいに信明さんとそっくりだし…
この後の事を考えると少しだけ気分が沈む俺なのであった
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