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恋人が愛おしくても上演中に盛ってはいけない
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「お待たせ致しました、波劇会場内へどうぞお入りください」
高級感溢れるロビーで四郎ちゃんと待っていると、女性の声でアナウンスが聞こえた。
それが合図だったかのように、扉に横に立っていた燕尾服のドアマン達が一斉に扉を開けた。
俺たちがいた位置はちょうど中の見えない場所だったけれど波劇、というだけあって扉が開いた瞬間に水の匂いがした。
周りの人々がしずしずと会場内へ吸い込まれて行く。俺たちも行こうかと四郎ちゃんに声をかけると席番号に一番近い扉の方へ歩いて行く。
俺たちが入りたい扉の近くで何やら人だかりが出来ている。俺は変なところで野次馬根性を出して早く席に着きたい四郎ちゃんを引っ張ってその人だかりの方へ近づく。どうやら、でっぷりと太った真ん中の男を取り囲むようにして人々が円を作っていたようだ。
「いやー、本日は誠に有難うございますな。無事に我が劇場も5周年を迎えまして、オーナーである私もたいそう苦労もしましたが...」
この劇場のオーナーらしき男だった。オーナーなのにロビーで演説まがいのことをしているということはかなりの目立ちたがり屋の様だ。
結局おし寄せる人々に退路を断たれ、俺たちは戻ることもできなくなっていた。人混みが嫌いな四郎ちゃんは今にも死にそうな顔をしている。ごめんね、と囁いても反応がない。
オーナーの話なんかこれっぽっちも聞いていなかったが、ふと目を戻すとオーナーと目があった。その瞬間、オーナーが、おお!と声を上げる。
「そこに居る!とても背の高いお嬢さん!これはこれは天女の化身か.....」
げ、と思うより早くオーナーがこちらへ向かってくる。それに合わせて人々は道を作った。まるでモーセだ。
俺の目の前にやって来たオーナーは軽く跪き、するりと俺の手を取って甲に口付けた。
オエー、と思って助けを求める様に四郎ちゃんに目を向けると四郎ちゃんはますます死にそうな顔をして俺の腕をぐいと引っ張り、オーナーから引き剥がした。
「どうも、わたくしの伴侶に何かご用ですか」
顔こそ笑って居るけれど言葉には棘しかない。顔も引きつってるし。四郎ちゃんが珍しく怒ってる。っていうか待って、伴侶って!!
「これは失敬。美しい方に意識を奪われてしまい不躾な事をしてしまいましたな」
「ははは、構いませんが、何用ですかな?」
火花が飛び散る。周りの人々はオーナーに恐れをなして居るのか、少しずつ減っていって居る。
四郎ちゃんは完全に俺とオーナーの間に割って入る様にして、張り付いた笑顔のまま話して居る。かっこいい。
俺の王子様はやっぱりかっこいい!大好き!
「いや何、邪な思いなどではなく、ただ美しい方がいるのに挨拶をしない方が男が廃ると云いますか...」
「そうですね。うちのは美人なので良く言われるんですよ。我々は波劇を見に来たので席に着きますね」
会話を終わらせたくて仕方ない四郎ちゃんは、オーナーの言葉を待たず、しかし最低限の礼儀は守る様できちんとお辞儀すると俺の手を引っ張って歩き出した
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