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ばればれの嫉妬心は隠しにくい
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「ねえねえ四郎ちゃん、やきもち焼いた?ねえねえ」
「五月蝿い!!!!!!」
四郎ちゃんがすごく照れている。やきもち焼くのそんなに恥ずかしいのかな。顔を俺に見せない様にしているけど耳が真っ赤なのが丸見えだ。
うふふ、と女性的に笑うと俺はその赤くなった耳に口づけた。
「うわ!!!!」
四郎ちゃんが驚いて仰け反る。後ろに倒れそうになったから腕を引っ張ってやって抱き寄せる形になった。これじゃあどっちが女性か解らない態勢だなあ。
本当鈍感で可愛い。
「う、離せ」
ぶっきらぼうに、不機嫌になった四郎ちゃんが俺を引き離す。いくぞ、と言って俺たちは改めて会場内へと足を踏み入れた。
水の匂いが身体中を包み込むと同時に、その幻想的な空間に思わず感嘆が漏れた。会場内は一段下がっており中央には、巨大な水槽。
そして会場内は全て水路になっていた。座席ではなく小さな舟に座って、劇を見るのだ。
俺たちが券を渡すと、船頭が何処からかやってきて、透明な硝子..だろうか...で作られた舟に乗る様に言われた。
四郎ちゃんは不安そうに恐る恐る乗り込み、俺の手を取ってエスコートしてくれる。なんだかんだ言って、優しいんだ。
俺たちが舟に乗り込んだのを見ればゆっくりと船頭が舟を漕いで、指定されていた場所までやって来る。舞台の右側の前方で止まった。
船頭は軽く頭を下げると、舟の前方が切り離されて入口の方へと戻っていく。残された俺たちは初めて見る光景に呆気にとられていた。
舟を触って見ると解るが、硝子だ。割れないか心配になり、身が引き締まる。座っている座席は臙脂色の天鵞絨のクッションが敷かれており、座り心地が良い。
場内は人々のざわめきと、水の音で満たされていた。
ちゃぷ、と目の前の水路の水面が揺らいだかと思うと、女性が上がって来る。
「波劇特製のお飲み物は如何でしょうか?」
水の中から舟にもたれるようにして、声をかけて来る。初めは理解ができなかったが、こういう風にして物販をしているのかと合点があえば、俺は強請るように四郎ちゃんを見た。
そんな俺にちらりと目をやるとあからさまなため息を吐いた後女性に小銭を渡して、二本、飲み物を受け取った。女性はにっこり微笑むとまた水の中に戻っていった。尾ひれが見えたので、人魚だったようだ。
そんな人魚から貰った瓶入りの飲み物を四郎ちゃんからもらい、お礼を言う。
相変わらず四郎ちゃんは仏頂面のままだ。
しゅぽん、と良い音がした。栓を開けると爽やかな甘い香りがする。
綺麗な形の瓶に口をつけて喉へ流し込む。
しゅわしゅわと、口の中で水が踊った。
炭酸のようだ。
四郎ちゃんも此れは気に入った様で、少しだけ表情が和らいだ。ふふ、よかった。
そんなこんなで飲み物を楽しんでいると開演を告げる鐘が鳴った。観劇なんて久しぶりすぎて緊張する。
どきどきしながら身を硬ばらせると、照明が消えて舞台水槽だけが明るくなった。
いよいよ、幕が上がる。
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