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俳優の苦労は一般人には判るまい
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四郎ちゃんをちょっと虐めてやろうと思って無視しているとその黄色い声を浴びる主がこちらへやってきた。
乙姫役の女優さんだった。
水から上がったばかりだからか濡れた髪を横に流していて、衣装は脱いだのか、薄い浴衣を纏っている。舞台上で見るよりも小柄なように思えた。
綺麗だとは思ったけれどミーハーではない俺はすっと身体を避けて道を作った。
それなのに彼女は動かない。
つまり、俺の目の前で立ち止まっていると言う事だ。
俺が疑問に思うより早く彼女が口を開いた。
「貴方、酒呑童子様の.....!」
え?
訳がわからない。いや、訳は判る。俺は酒呑童子の息子だ。でも、それを彼女に言われることがわからない。なぜ?知っている?
俺が混乱して目を白黒させていると後ろにいた四郎ちゃんがすっと俺の前へ出てきた。
「此奴は俺の連れですが何か御用でしょうか?」
「....!大変失礼致しましたわ...もし宜しければお2人とも、楽屋の方へお越し頂いても?」
四郎ちゃんに言われて彼女はこの場所で話をしづらいと判断したのか小声で提案をしてきた。
答えを俺に託した四郎ちゃんがこちらを見てくる。
父の名前が出た事で一気に彼女への警戒値が上がった俺は悩んだけれど、彼女の楽屋へ行く事にした。
楽屋ってこんな感じになっているんだ。
いや、そんな事を感心している場合ではない。
彼女に指し示されて楽屋の椅子に座った。彼女とあい向かいになる。
なんで彼女は父....正確には顔も知らないんだけれど、大妖怪と言われた父の名前を出したのだろうか。
恐ろしいような、でも知りたいような気がする。彼女の顔を改めて見つめた。
黒曜石の様な瞳がこちらをじっと捉える。彼女の目は俺の不安と裏腹に優しげだった。
少しだけ沈黙が続く。四郎ちゃんも警戒心を剥き出しにして座っている。
この楽屋の図、滑稽だよなあ。水に濡れた女性とあい向かって女装したでかい男に仏頂面の男。異様な光景だろうな。
全然関係ない事をぼんやり考えていると、彼女が口を開いた。
「間違っていたら大変申し訳無いのですが、酒呑童子様の息子さんでは無いでしょうか?」
....どうして知っているんだ。
どう答えたらいいのかわからない。俺は口を開けない。
敵なのか味方なのか。
彼女は一体何者なのか。
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