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舞踏会での油断は禁物
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「うわぁ」
豪華だ。煌めくシャンデリアや大理石の床はもちろん,静かに海外の音楽が流れる会場内にはたくさんの人々が談笑していた。
会場に入るなり,早速俺を見つけた男性陣が集まってくる。
毎度のことでもうとっくに慣れたが四郎ちゃんは不満顔でこっちを見ている。
軽く手を振って大丈夫だよというアピールをすれば俺が見えるところの壁に寄りかかって腕を組む。
壁の花を決め込むつもりか...
そんな我儘坊やみたいな四郎ちゃんをみれば、苦笑いし,男性たちの相手に回る。
何人かに手を取られて甲に口付けられる。
「お綺麗ですな」
「何方からお越しで?」
「一曲踊っていただきたい」
180cmもある女にダンス申し込むなんてすごい度胸だな。
聞き飽きた言葉に適当に返しながら,お目当の妖がいないかを探る。たまたま目に入った四郎ちゃんの仏頂面が面白かったけど見なかったことにしよう。
ふと妖気を感じる。
そちらへ目をやると,男が一人,壁にもたれて此方をじっと射るように見ていた。
彼奴だ。俺の感覚がそう告げた。四郎ちゃんを見るとウエイターに捕まってその手にグラスを握らされそうになり慌てていた。まあ平気だろう。そう思った俺は男性陣に別れを告げて一人,その妖へ近寄る。
なるほど,女が好きそうな顔をしている。俺より背も高い。
「如何しましたか?美しいお嬢さん」
低い声でそう言い,他の男と同じように跪いて手を取り,甲にキスする。
紳士的で何処か色気のある行為だ。大抵の女はこれで恋に落ちるのだろう。
そんなことを思いながら俺は慎重に笑顔を作る。
「先程此方を見ていらっしゃったでしょう?私,貴方のことが気になってしまって」
「おや,これは随分積極的なのだね。連れの男性は?」
「あれは兄ですの。どこへ行ったのかしら」
「わからないな...綺麗なレディ,貴女はまるで野に咲く可憐な花のようだ」
なんだこいつ。
俺の髪を指で撫で,いつの間にか俺が壁に押し付けられるような形になっている。今すぐ抹殺してもいいんだけどそれは避けたい。んー,どうしよっかな...
少し考えたのちに誘ってこいつのアジトで抑えるべきだと結論に至る。
「ねえ,私...もう舞踏会には飽きちゃったの。もっと楽しいこと...しません?」
上目で見上げ,少し眉を下げる。物欲しそうに指で唇をなぞれば大抵の男は落ちた。
こいつも例外ではなさそうだった。
ごくり,と唾を飲み込み,妖は俺の腰に手を回す。少し嫌な気持ちになった。
「楽しいことをしたいのかい?お兄様に怒られてしまうよ?」
「内緒にすれば平気よ」
「そうかい....なら...」
まずい!そう思ったけど遅かった。妖が俺の体を動かないように固定し,唇を塞ぐ。抵抗する間もないままどろりとした液体が流れ込んできて,意識を手放してしまった。
四郎は焦っていた。
...畜生あのウエイター許さねぇ
天の姿が少し目を離した隙になくなっていたからだ。
二階に上がり,シャンデリアに飛び乗る。片手で繋ぎの鎖を持ち,もう片手で双眼鏡を覗く。
−−どこだ御門頼むから無事でいろよ...
今回の妖は淫妖だ。何されるかわからない。
仕事よりも天の安否を気にして焦りながらその姿を探す。
...いねえ...いねえ!!
男たちの間,机のそば,楽隊の横ーー
どこを探してもその姿はない,焦りと怒りが湧いてきた時,見慣れたドレスの裾が見えた
.....いた!!
そちらへ目を向けると背の高い男が天を壁に押し付けている。
天の顔は見えないが,何かを話している。
男がさりげなく天の開いた背中をなぞっている。
....許さねえ
こめかみに青筋を立てて口角を引きつらせていると男が少し屈んで天の唇を奪うのが見えた。
バキ,と音を立てて双眼鏡にヒビが入る。
くてん,と天が気を失い,男にもたれかかる。どうしたんだ?と思うより早く男が此方を見て確実に笑った。
そしてそのまま天を姫抱きにして会場の外へと消えた。
....糞が...!!!
怒りのままにシャンデリアから飛び降りて急いでその姿を追った。
会場にはゆったりとクラッシックが流れていた。
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