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路で知り合いに会った時の対応が難しい
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「漢にはァ〜守らなければならないモンが在るゥ〜喉仏〜」
「なんだその歌は」
「前に見世物小屋で歌ってた歌」
「訳がわからんな」
俺と四郎ちゃんは中心地寄りの繁華街の方までやってきた。四郎ちゃんは相変わらず適当な浴衣を着ていて、俺は袴の中にシャツを着た書生さん風の格好。
相変わらず街中は賑やかで、今日は休日だからか色んな年齢層の人々が蔓延っていた。四郎ちゃんと肩を並べて俺はちょっと旦那様を自慢するみたいに胸を張って歩く。
「あら!天ちゃんじゃァない!?久しぶり〜!アタシの店寄って行くかい?」
「よお土御門の坊ちゃん、今日も俺んとこで買っていけよ」
俺はこの辺りに顔見知りが多く、今日も例外ではない。
四郎ちゃんと出会ってすぐの時はこの辺の街で女郎遊びとか蔭間遊びとかまあ散々に遊んでいたのでそういう類の皆さんから大いにお声がけを頂く。
しかし隣にいる四郎ちゃんはあからさまに嫌な顔をするので丁重に御断りをして俺は四郎ちゃんを安心させてやる。
ムッとしながら四郎ちゃんが行きつけの服屋へ入って行く。外套はいつもここで買うのだった。
四郎ちゃんは洋服選びに時間がかからないけど、外套だけは変なこだわりがあって、自分がいいと思ったものじゃ無いと買わない。しかも選んでる最中話しかけるとキレるという理不尽なタチだから俺は店の外に出て大通りを眺めていた。
「てーんちゃん」
ぼーっとしていると声をかけられた。そっちの方を見ると、メガネ....西園寺がいた。
「相変わらず可愛い顔してんな!一発ヤろうぜ!」
このクソメガネは俺の悪友なんだけれど、とにかく五月蝿い。下衆い。俺に女郎遊びだのなんだのを吹き込んで連れ回していたのも実はこいつで、インテリメガネみたいな見た目してるくせにど変態で手がつけられないときている。
なのに有名出版社の編集やってるから無駄に金を持っている。腹立たしい。
「お前とはヤらないから」
「つれねえな天ちゃん。どうなの?最近。旦那様との具合は」
「ちょー最高だから。めっちゃ愛されてるから。四郎ちゃんで俺の型とれるレベル」
「へーへー惚気は別に聞きたかねえよ。俺はいつでも天ちゃんが『西園寺幸太郎様抱いてください』って言ってきてくれるの楽しみにしてっからよ」
「言わねえよ」
こいつは女専門のくせに俺だけは抱けるとか言ってくるからむかつく。黙っていればもう結婚しててもおかしく無いようなやつなのに本当残念だ。
そんな悪態を吐きあってると眉間にしわを寄せたまま四郎ちゃんが店から出てきた。
俺と一緒にいる西園寺の顔を見て、四郎ちゃんがますます眉間にしわを寄せた。
「西園寺エロ太郎...また御門にちょっかい出してんのか」
「やだなあ鋏屋の旦那ってば、そういうんじゃ無いですよ。ってかエロ太郎って....」
「まあなんでもいいがうちの御門には手を出すなよ」
「昔の友達とちょっとお話してただけじゃ無いっすかー。じゃ、俺はこれでおさらばしますよ」
四郎ちゃんがちょっと睨むと西園寺は肩をすくめて飄々とした態度のまま去って行こうとした...が、すぐ踵を返して戻ってくる。
「あ、2人とも、波劇って知ってます?水の中でやるお芝居なんですけど、今大人気で。チケットすっげー貰ったんであげます。見に行ってください!んじゃ!」
早口にそう言うと俺の手にそのチケットを握らせてさっさと行ってしまった。
「あいついい奴なんだかなんなんだかわからんな」
四郎ちゃんがしみじみ呟いた。
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