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今だけは
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有紀は咲耶の腕を解放すると、咲耶の滑らかな髪を指に絡ませた。咲耶は手放しかけた理性を呼び戻すと、解放された両手で有紀の胸を押し、体を起こした。
「・・・日野沢、こんなことはやめよう。」
まだ胸の高まりが収まらず、咲耶は潤んだ瞳を有紀に向けた。やはりこんなことは間違っている。そもそも有紀と咲耶は生徒会長と風紀委員長で、こんな甘い時間を過ごす関係ではないはずだ。それに、どう考えても汚れた自分と有紀が釣り合うとは思えなかった。こんな行為は有紀の光を濁らせるだけだ。流されまいと必死に理性を留める咲耶を他所に、有紀の指が咲耶の濡れた唇を撫でた。身体の奥がまた熱くなりはじめ、咲耶はその手を払おうとするが、逆に有紀に絡め取られてしまう。有紀はもう片方の手を咲耶の首に回すと再び口づけをした。柔らかい有紀の唇が触れる度に、咲耶は切ないような苦しいような感情に襲われた。
「は・・・あ・・・。」
有紀の舌に翻弄され、また思考が溶けてしまいそうになる。嫉妬で頭がおかしくなりそう、そう有紀は言った。その言葉通りの意味だとしたら、有紀が自分に少なからず好意があるとそんな都合の良い考えが芽生えてしまう。咲耶はそんなはずはない、いやでもと自問自答を繰り返した。鈍った思考で何とか考えを巡らせたが、結局その答えを出すことができなかった。そもそも憧れの王子様に唇を奪われ、まともに頭が働くはずもない。
「ねえ、月瀬は俺が嫌い・・・?」
口づけを止め、有紀は静かに言った。視線の先にいる有紀は、泣きそうな顔をしていた。有紀の問いに好きだと答えることはできない。今この場所でそれを告げるのは違う気がした。ただ、そんな顔をさせてしまっているのが自分であるのかと思うと胸が張り裂けそうになった。有紀はただ迅に張り合っているだけなのかもしれない。間が刺しただけかもしれない。それでも世界で一番愛しい人が泣きそうな顔をしていて、自分が抱かれることでその表情を変えられるのなら、もう何も考えることなどないはずではないか。生徒会長とか風紀委員長とか、特待科とか普通科とか、そんな肩書き全て投げ捨てて、今だけはこの甘美な一時に溺れても良いのではないか。咲耶はほとんど無意識の内に両腕を有紀の首に回した。
「・・・シャワーを浴びたい。」
消えそうな声で、この恋情が決してばれないように咲耶は努めて淡々と呟いた。
「お安い御用だ。」
有紀は微笑むと咲耶の身体を軽々と持ち上げ、そのままバスルームへと向かった。
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