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第5話
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あ!そういえば、俺は気付かないうちに赤い傘を食べてしまったのか…。がっくりと肩を落とす。だって、羊羹だけ別に味わいたかった。
「うぅぅ…傘…。」
「傘?…あ、これか、」
蒼さんが、皿を持ち上げる。一緒につられて皿を見る。
あ、赤い傘。
おお!良かった!ちゃんと残ってた。
「これ食べれるのか?」
「勿論です。これは、羊羹ですよ。」
「ふうん。」
そう言って指でつまんで眺めてる。
あ!あ!どうするつもりなんだ。投げ捨てるのだけは止めて!
必死で見てたら目が合った。
捨てるくらいなら、ここに入れて下さい。
「あーん。」
声と一緒に口を開ける。
彼の目がまた見開かれ、ゆっくり細まった。なんか、猫みたい。
赤い傘が口へ近づく。唇に指が触れ、舌の上へ甘味がじんわり浸透する。離れていく細く長い指。爪先は短く切り揃えられていて清潔そう。
唇を閉じて、小さな羊羹を押しつぶす。あ、梅肉の酸味がする。甘くてほんのりしょっぱい。そして、紫蘇の香り。
酸っぱ甘い!美味しい!
顔がニヤけてしまう。ふふふ。
「甘、」
その声にはっとした。彼を見れば、赤い舌が指先を舐め…目が細くなる。
やっぱり、猫みたい。
「梅の味、分かりましたか?」
「ん?ああ…この味、梅なのか…。」
よく分かんないなって呟く。指先舐めただけだから分かんなかったか…。残念に思う。美味しいものは、一緒に味わってもらいたい。
いつの間にか、緊張は無くなってた。蒼さんは、そんなに悪い人じゃないのかもしれない。
「また買ってきますね。今度は、蒼さんに赤い傘を食べてほしいです。今月の限定品なんですよ。1個買うのも苦労したから、いつになるか分かんないけど。」
目が見開かれる。
「んじゃ、出来る限りここに来る。」
「はい。」
目が細くなり、口の端が上がった。さっきまでは怖く感じてたその表情は、もう全然怖くない。むしろ、優しく感じる。
膝に跨ったまま笑い返す、猫みたいな彼へ。
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