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苦しいです後輩くん
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「真咲、だからちゃんとご飯食べろって」
「悪い、食欲ないから」
先日、廊下で大神と鉢合わせてから、真咲は笑うようにはなった。
だが、楽しそうに笑いはしない。
心配かけないように、と気を遣っているのがまるわかりで、
そのくせ食事はちゃんと摂ってくれない。
勿論羽島はそんな真咲が心配でたまらなかった。
「おいマサ、そんなんだと倒れるぞ」
「……大丈夫ですよ、朝と夜はちゃんとしてます」
「けどお前なあ……」
大神が真咲から離れてからは神楽も昼に真咲達のところに来るようになって。
神楽もまた、真咲が心配だったし大神の事について悪いと思う気持ちもあった。
羽島と同じく、元カノについてまさか今更、と思っていたから
こんな事になるだなんて思ってもいなかった。
「あのさ真咲、聖さんと帰りにどっか寄ってこうって言ってんだけど、真咲もさ」
「いいよ、邪魔するの悪いし」
「そんな事気にしなくていいから来いよ、
テスト前で学校終わるの早えんだし」
「……いや、せっかくですけど、すいません」
真咲を元気付けようと二人が気を遣うも、力なく笑って断られて。
どうしたものかと二人は顔を見合わせてため息をついた。
「じゃあ俺、先に帰るから」
「あ、ああ……うん、また明日な」
「明日土曜だって、羽島」
「あ、そっか、じゃあまた、な」
動揺する羽島に真咲はくすりと笑って帰っていく。
羽島は予定をキャンセルして真咲と居たい気持ちもあったが、
神楽に聞きたいこともいろいろあったので仕方なく見送った。
教室から出ていく真咲の背中はやけに頼りなく見えた。
「……彼女、か」
帰り道、人通りの多い時間なのもあって
人を避けるようにして歩きながら、真咲はぼそりと呟いた。
もういい、と大神の事について諦めたものの、
傷ついていないわけではなくて。
散々好きだなんだと言っておいて、彼女がよりを戻そうと言い寄ったら結局そっちなのかと
自分は所詮彼女の代わりだったのかと最近はそればかり考えて眠れなかった。
思えば、大神が非行に走ったのも自分に声をかけたのも
自分が離れていかないかあんなにも不安がったのも
全部が全部、彼女が起点だったじゃないか、と。
「……俺じゃないじゃんか」
そう結論づけると、やはり大神が見ていたのは自分じゃなく、
自分を通して見た彼女だったんだと。
そこまで考えて視界が潤んでしまったのがいけなかったのか
それとも連日の睡眠不足が祟ったのか。
真咲は通行人を避け損ねて、どん、と強くぶつかってしまった。
「あ……すいません」
「いってーな、どこ見て歩いて……
……あー、ビンゴォ、見ぃーつけた」
「…あ…、…っ…」
「よぉ、探してたぜ、真咲ちゃん」
謝ろうと顔を上げて、そこに居たのは
この一年で忘れたはずだった、けれどどうしても忘れられない顔。
なんで、どうしてここに、とぐるぐると思考がまわって血の気が引いていく。
がっ、と強く腕を掴まれて怯える真咲を囲むように寄ってきたのは
二年前の夏に自分を殺しかけた、三年間のいじめの主犯だった面々だった。
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