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許さなくていいです後輩くん
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「……、……っ……」
「うっぜぇな、そんなに怯えんじゃねえよ」
ああ、このままヤられる、と
先程のカラオケルームで真咲は目を瞑ってそう思ったが、
真咲のシャツがびり、と力任せに破られた時に
タカと呼ばれていた男……宮園鷹也がやめろと仲間に制止をかけた。
気持ち悪い、と言う冷たい声と本気の侮蔑を込めたその目力に圧され、
仲間は冷や汗を流しながら冗談だ、と引いて。
それからは鷹也達は普通のカラオケをして夜になって解散となり
何故か真咲は鷹也に連れられるまま見知らぬマンションの一室に来ていた。
「あ、の、俺、帰るから……」
「……よくそんな事言えるなお前、
俺が止めてやらなきゃあのままヤられてたんだぜ?なあ?」
「……っ……」
「それとも、強制的に帰れなくしてやろうか?」
にやにや笑って言われた鷹也のその言葉に、真咲はぶんぶんと首を振る。
そして帰ることを諦め、大人しくその場に立ち尽くした。
「座れよ。ソファでもなんでもいいから」
「……なんで、その……」
「ああ?」
「な、んで、俺、連れてきた、の」
からからと緊張と恐怖で渇いた喉から、絞り出すように喋る真咲。
俯いて目線が定まらないまま話す真咲に、
鷹也は苛立ったように舌打ちして、無理矢理ソファに座らせる。
そして自分もその隣にどかりと腰を下ろして
ミネラルウォーターを真咲に押し付けた。
「その服で街中うろつきたかったか?」
「そ、れは……」
「あー、ほんとそれうぜえ、
昔みたいにちゃんと喋れよ、それとも何か?
鶴人が隣に居ねえとまともに会話もできませんってか?」
「昔って……」
イライラしたような顔で鷹也は自分のミネラルウォーターを煽る。
昔みたいに、そう言われて真咲は困惑した。
この男、宮園鷹也は真咲の幼稚園前からの幼馴染みで、
中学であれが起こるまではそれは仲が良かった。
よく羽島も加えて三人で遊んだりもしていたほどで
真咲はどんないじめよりも、そんな鷹也に蔑まれ敵にまわられた事が一番苦しくて。
ましてや自分を殺しかけた相手になってしまって
それなのにまともに会話などできるはずがない。
「……俺の事、気持ち悪いって、いじめてたのは、そっちだろ」
「うるせぇな、気持ち悪いんだよお前何につけても鶴人鶴人って……
つーか邪魔なんだよアイツ、マジで消えればいい」
「は、羽島は何にも悪く…っ…!!」
「それが気持ち悪いんだよ!
これ以上アイツの名前出すとその口二度ときけねえように塞ぐぞ!!」
がっ、と大きな掌で顔を掴まれて乱暴に言葉を遮られる。
びくう、と真咲が余計に怯えて涙目になって、
それを見た鷹也はまた忌々しげに舌打ちをして手を離す。
「呼べよ、昔みたいに。
鷹也って呼んでただろうがお前」
「……、…気持ち悪いから呼ぶなって、そっちが」
「うるせぇな、呼べっつってんだよ今は」
「っ……、……たか、や」
ぎろ、と睨まれて、真咲は震える声で遠慮がちに名前を呼ぶ。
わけがわからない、と内心はかなりパニックで。
「……寝てねえのか?最近」
「……っ」
「だから、いちいち怯えなくてもなんもしねえよ」
す、と手を伸ばされて優しく目の下の隈を撫でられて、
真咲のパニックはさらに悪化した。
目の前に居るのは自分を殺しかけた相手なのに、
自分の事が嫌いな相手なのに、
触ってくる手はまるで幼い頃怪我をして泣いていた自分を慰めてくれた手そのままの優しさで。
「腕もガリガリじゃねえか、なんだお前、
最近なんかあったのか?」
「……た、かやに、関係、ないだろ」
「……だから、よくそんな口きけるよな。
優しく聞いてやってるうちに答えろよ?」
「っ……そ、の、後輩、が、ちょっと……」
手首を掴まれて、脅されるように睨まれながら
真咲は仕方なくぽつぽつと話始めた。
かなりかいつまんで、性別や名前は出さずに
後輩と付き合っていて知らぬうちに元恋人とよりを戻されたこと、
相談しようにも相手がいない事、どうしたらいいかまるでわからない事を鷹也に話す。
最初は真咲を少し睨み付けながら聞いていた鷹也は
だんだん顔が険しくなり、最後のどうしたらいいかわからない、
の言葉を真咲が言い終わる前に真咲を引き寄せて強く抱き締めた。
「もういい、やめろ」
「……た、鷹也、っ?」
「いいから、無理すんじゃねえ。
つーか、相手いねえって、鶴人が居るんじゃねえのか」
「や、あの、恋人、できたから……
今日、も、その恋人と出かけてる、し」
ぐるぐるとパニックになりながら真咲が言えば、
鷹也はぎりり、と憎らしげに歯軋りをして。
そしてぎこちなく真咲の後頭部を撫でる。
「今、恋人いねえのか、お前」
「……い、るよ、まだ直接は言われてないから…」
「ふざけんな、そんな奴やめちまえ……!
なあ、俺にしろよ、俺だけ見てたら優しくしてやるし尽くしてやる、
こんな顔にはさせねえから、だから俺にしろよ」
「は……?」
あまりに突然の告白に、真咲の頭は最高潮にパニックで。
しかし苦しそうな鷹也の声に、どう答えていいかわからなくなる。
「ずっとお前が好きだった、俺だけ頼って俺にだけなついて、
絶対守ってやるってそう思ってた、なのに……
お前は鶴人が現れた途端に鶴人ばっかり見るようになった、
それが気に入らなかった」
「お、れは、鷹也もちゃんと……」
「見てねえよ、鶴人鶴人って大事な事は全部アイツを頼って俺には言わなくて!
だからお前を一人にしてやろうって、
全員から嫌われたお前に優しくして俺にすがらせて俺だけ見させるつもりだったのに…!!
なのにアイツだけお前を嫌わない、それどころかお前がすがったのはアイツで…!!」
「だってそれは、迷惑ばっかりかけて鷹也に、嫌われたくなくて」
苦しそうな鷹也に、真咲はおろおろと戸惑う。
しかも衝撃の告白つきでさらに混乱して。
ぎゅうう、と強く抱き締めてくる鷹也にどうしていいかわからなかった。
「俺の事を見ないお前が嫌で、それならって…
俺は取り返しのつかないことをして……
そしたらお前は、どっか居なくなるし、鶴人までついていって……
やっと冷静になって後悔したよ、自分からお前の事傷つけて遠ざけたのを」
「……鷹也……」
「だから俺はお前を諦めた、
鶴人が居たら大丈夫だろうって、それなのに、今お前が苦しんでる。
なあ、俺にしろよ、もうお前の事苦しめたりしないから、
お前に尽くして償うから、俺にしろよ、真咲」
切なそうな顔で言って、真咲は鷹也にそっと口づけられた。
ああ、拒もうと思えば拒めたのに。
抱き締められた温かさに安心して、優しい言葉に、仕草にすり寄ってすがって、
キスを拒めなかった俺を、許さなくていいよ、と
真咲は混乱している心の中で、それだけ大神に謝った。
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