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いいんだよ幼馴染みくん
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「おいこら真咲、休みだからっていつまでも寝てんじゃない」
「……なんだよ~凌馬兄ちゃん、まだ9時じゃん寝かせてよ……」
先日終業式が終わり夏休みに突入した真咲は、
休みだからとまだ部屋着でベッドの中に居た。
が、同じく休みだった兄の凌馬にタオルケットをひっぺがされ、
嫌そうに眉を寄せながら唸ると無言で頭を叩かれる。
普段は優しく起こすのに、と不思議に思って仕方なく真咲は目を擦りながら体を起こした。
「……お前に客、来てるから」
「何、なんでそんな不機嫌……
あー……わかった、ちょっと出かけるわ今日」
「あれと二人で?」
「……他にも居るよ、羽島とか」
何故不機嫌なのか、と窓の外を見れば、
敷地には入らず気まずそうにして首辺りに手を当てる鷹也の姿。
もう真咲はすっかり許していたが、兄も含め家族は
相変わらず鷹也を恨んでいるのだと改めて思い出す。
この前かなりの修羅場になった事は記憶に新しい。
「部屋で待ってもらっていい?」
「…………」
「……わかったよ、上げなきゃいいんだろ」
「……お前本気であれと付き合っていく気か」
「何それ、どういう意味」
眉を寄せて不機嫌そうな兄に、渋々鷹也に外で待ってもらおうとしたら
厳しい声で言われた言葉。
それに真咲は思わずじろりと兄を睨んだ。
「鷹也はもう謝ってくれたし俺がいいって言ってるんだからいいだろ」
「お前な……相手の親が土下座して
二度と息子を近づかせないからって言ったから
辛うじて警察沙汰にならなかっただけで、
あれは立派に犯罪なんだよ、謝って許して、それで済む話じゃない」
「あーもう、いいよその話!
はいはい家に上げないし兄貴達も話さなくていい、それでいいんだろ、
家族だからって俺の友達付き合いまで管理されたくないんだけど」
寝起きの機嫌の悪さもプラスしてか苛々した様子で凌馬を睨んで、
威嚇するかのように見る真咲に、凌馬は難しい顔をした。
何も怒っているだけではない、心配しているからこそなのだとそう言ったが
真咲の顔は更に不機嫌になって。
「鷹也はこの前ちゃんと謝りに来ただろ、
それを聞きもしないで追い返したのは兄貴達だ」
「だからお前、あれはそんな単純な問題じゃない」
「俺には鷹也の人生奪う権利なんかない。
誰だって間違った事はするよ。
だから犯罪者だって更生した人にはやり直す機会が与えられる、
その機会を与えないのは行き過ぎた傲慢だ」
「……高校生が知った口をきくんじゃない」
久しぶりに兄弟喧嘩なんてものをした、と頭の片隅で思いながら、
真咲はこの話は終わりだと言うように出かける準備をし始める。
まだ凌馬は納得いかない様子だったが、
それに気づかないふりをして真咲は家を出た。
「ごめん鷹也、暑いの苦手なのに」
「いや、こっちこそ悪い。
迎えに来たのが俺で」
「なんで、俺嬉しいからいいよ。
兄貴達の事は気にしないでいいから本当、
ちょっと頭堅くてさ」
「……あれが普通だと思うけどな。
お前が優しすぎるだけで、普通は許されないし」
少し俯いて鷹也が言うと、真咲は複雑そうな顔をした。
そして明後日の方向を見て口を開く。
「許しちゃいけない事は勿論世の中にはあるんだろうけどさ、
やった本人が反省して更生すれば、
やられた側は許す責任もあると思うんだよね。
鷹也にとってあれは事故みたいなもんだろ」
「けどお前、俺は……」
「倫理だとか法律だとか難しい事は俺よくわかんないけどさ、
俺は鷹也を一生苦しめるより一生涯の友達になる方がいいよ、それじゃダメ?」
「…………お前本当、それ、いつか後悔するぞ」
ふにゃりと笑う真咲に鷹也は目頭が熱くなるのを感じた。
羽島や大神に世話を焼かれたり神楽に心配されたり
普段は頼りなさげに見えるくせに考え方は誰より達観していて大人なんだと、
だから真咲の周りには人が集まるのだと鷹也は改めてそう感じる。
いつか真咲が優しさを後悔した時には、
それで間違ってないんだと、真咲はそのままで居ていいんだと
そう言って慰めてやれる人間になりたいと強く思った。
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