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リョウの家
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半日ほど時間は進み、現在時刻は20時30分。
今僕は、リョウさんの家にいる。
「何もないけど、その辺座っといてやー」
「は、はい…お邪魔します」
何故こうなったのか。
正直自分でもこんな展開は予想していなかった。
今日はバイトで久々にリョウさんとシフトが被った。
そこで唐突に、「今日うち泊まらへん?」と誘われたのだ。
理由を聞くと、「彼女に振られて1人が寂しくてな、今夜だけでも誰かといたいんや。お願い!」と両手を合わせられた。
あまりに急な事で戸惑ったし、人の家に泊まった事がないので気が引けたが、そんな風に懇願されると断れなかった。
それに…今日は母さんが出かけていて、帰りは夜中になると言っていた。
帰ったらまた昨日ような目に遭いそうで…
帰りたくない、というのが本音だ。
「ほーい、召し上がれ!」
リョウさんが僕の前に出したのは、湯気の立ったカレーだった。
「昨日作りすぎてしもてな。
良かったわぁ、もっちーが来てくれて」
”来てくれて良かった”
その言葉が予想以上に嬉しく感じて、自分の単純さが可笑しかった。
「いただきます」
熱々のカレーを口に入れる。
甘めのカレーは、朝から何も食べていない身体をほんわか温めた。
今朝吐いてしまったし、弱った胃にカレーはあまり良くないのかもしれないけれど、それでも今はこの甘口カレーが純粋に美味しかった。
「美味しいです」
「ほんま?いやー、俺こう見えて辛いの苦手でな。いつも甘口なんよ。口に合って良かった。
ほな、俺もいただきます」
そう言って、リョウさんもスプーンを取った。
なんだか久しぶりにちゃんと食事を摂った気がする。
今日だけでなく、最近はずっと食欲がなかった。
何か食べても味気なくて、噛んで飲み込んでまた口に入れて、という機械的な動作だったのであまり食事という実感が湧いていなかった。
…あったかいなぁ、リョウさんのご飯…
人が作ったご飯だからかな。
誰かと一緒に食べてるからかな…
「もっちー、」
突然呼ばれたかと思うと、リョウさんの片手が僕の頬に触れた。
不意を打たれてビクッと体が反応したが、顔を上げるとリョウさんが心配そうな眼差しで僕を見ていた。
「な、なんですか…?」
リョウさんは少し迷うように視線を下げ、決心したように僕の目を見た。
「…何か、あった?」
その言葉が一瞬理解できず、明るい部屋に沈黙が流れた。
テレビもつけていない、外からも音がしない、僕もリョウさんも動かない。
時計の秒針だけが、カチコチと音を立てた。
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