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バイト初日
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次の日、居酒屋バイト初日はとんでもなく忙しかった。
「すみませーん、注文いいですかぁ?」
「はーい!」
「頼んだのに来ないんですけど〜」
「申し訳ありません、もうすぐ出来上がりますので少々お待ちください」
「こっち生ビール4つで!」
「はい、喜んで!」
金曜の夜だからか会社帰りのサラリーマンが多く、店内はガヤガヤと賑やかだった。
そんな中で僕はひたすら店内と厨房をぐるぐると往復し、あっちに呼ばれこっちに呼ばれ、注文を受けては料理や飲み物を運んでいる。
休む暇もないが、忙しいのは別に嫌いではない。
仕事というのは、働けばお給料が貰えるという至ってシンプルな仕組みに支えられている。
特にここは時給が良い分、多少大変なくらいが丁度良く感じた。
「お待たせしました。生ビール4つと串焼き盛り合わせです」
四人のスーツ男性のテーブルに注文されたものを置く。
「君新入りさん?若いねー」
「あ、どうも…」
「可愛いなぁ、休憩ついでにおじさんたちとお話ししない?」
「い、いえ!そんな訳には…」
「ほらほら、遠慮せず〜」
男に腕を掴まれ、クッと引かれた。
どうやらかなりお酒が入っているようだが、そんなお客さんをどう断ればいいのか分からず、キョロキョロと周囲を見渡す。だが店長も他の店員もちょうど見当たらなかった。
「は、はな…」
放してください。
そういうつもりだったが、僕の腕を掴んだその手は別の手に掴まれて離れた。
「村井さん、二件目だからって酔いすぎですよ。
ごめんね、君ももう行っていいから」
助け舟を出してくれたのは四人の中で一番若い、30代くらいの男の人だった。
「す、すみません、ごゆっくりどうぞ!」
会釈してそそくさとそのテーブルから離れた。
助かった…
あとで酔っ払いの対応について店長に聞いておこう…
1時になり片付けを終えると、初日のバイトは終了した。
「お疲れ様。初日どうだった?」
店から出てすぐ、店長に声をかけられた。
「お疲れ様です。お客さんが多くて大変でしたが、なんとかやっていけそうです」
「そうか、良かった。それにしても初日なのにミスも全然しないし、しっかりしてるね。
君を雇って正解だったよ。これからよろしくね」
「こ、こちらこそよろしくお願いします…!頑張りますっ」
褒めてもらえたことが、子供みたいに純粋に嬉しくて、僕は頬を緩ませながら家までの夜道を歩いた。
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