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「診療時間は終わったの。今は、入院の方だけだから、診察室、使いましょう」
カーテンを開け、案内される診察室。
「意見は聞いた。でも、まだ、実際は診させては貰ってないんでしょう?」
「俺達は、今回、正式に診てるわけじゃない。何度も脱がされるなんて可哀想だろう」
「はいはい。で、夜勤明けふらふらなあたしは可哀想じゃないんだね・・・ま、いいけどね。
似てるね~愛しの奥様に~。マジでこの人のタイプだわ、この子」
私達は、その独特な診察室の風景に固まっていて、二人の会話が耳を素通りする。
この、マッサージチェアー然とした、奇妙な椅子。
これに、千色は乗せられるのか?
「普通は医師以外、男子禁制なの、ここ。でも一応、皆、あたし以外、性別男子だから
今日は特別、あなたも一緒でいいわ。その方が、安心なんでしょう、千色くん?」
問診する為に、カルテを用意しながら、阿川医師は言い、千色に普通の丸椅子に座るよう勧める。
私と佐倉医師は立ったままだ。
「胸が、膨らんできたってことだけじゃないだろうって、佐倉クンは言います。
考えられることは、いろんなパターンがあるけれど、ホルモン異常の可能性が濃い筈」
ごめんね、脱いで下さい。って、シャツを指差され、千色が上着を取り去る。
「うわ~ちゃんと、おっぱいだわ。キツノよりあるかも」
「それ、本人に言いつけていいか?」
「ダメ、殺されちゃうから!あの女、メス使いだけは巧みなんだから」
ごめんね、触るねと。やはり、この女医も胸を触診するようだ。
「はい、ありがとう。じゃあ、服着ていいよ。というか、あのあっちの服に着替えて来てくれるかな?
下着は全部外してあれだけ着て来てくれるかな、ごめんね、嫌でも、これは仕方ないんだ」
診察用の椅子の仕切りのカーテンの向こうを指差され、ちらっと私を不安そうに見やる千色に頷いて見せる。
溜息を深く一つして、千色は立ち上がる。
「千色くんの、嘘のお兄さんに聞きます。あの子の血縁の家族はいるの?」
「おりません。彼は、孤児で、私の家に引き取られました。母親と二人暮らしだったそうですが
母親が亡くなって、孤児院で数年暮らしていたそうです」
「彼の、生い立ちを知らないってことね。わかった。で、保護者は?」
「・・・・・・え?」
「千色くんの、扶養をしている人よ」
「でしたら、私です。・・・彼は、当家の使用人なので」
頑なに隠し続けた、千色の身体を彼らは、これから見る。医師として。
もう、私も隠している訳にはいかなかった。
「私は、彼の主人であり、彼の恋人のつもりです。どうか、彼を助けて下さい」
ましてやこの駆け出しの医師二人は、無報酬で、千色の初診をしてくれているのだ。
善意をはき違えているなんて、到底思えない。
「千色は、もしかしたら、重大な病気かもしれないんです。あんなに痛がって苦しんでても
誰にも、身体を見せてはいけないと、母親と孤児院の神父に誓って以来、我慢している。
私も、彼の身体の異常は、わかっています。もう、隠し通せないことも」
婦人科を受けるように、佐倉医師が導いた理由も漠然とわかる気がした。
私だって、あふれる情報社会で育った子供なのだ、千色の身体の異変を調べていた。
手術で着るような服を着て、素足にスリッパを履いた千色が、震えて立っていた。
駆け寄って、肩を抱いて、囁いてあげる。
「私がついているから、診てもらおう。千色の身体、ちゃんと綺麗な身体。
大丈夫、千色は化け物なんかじゃないって、二人が教えてくれるよ」
2人きりの秘密を、明け渡す時なんだ。
「じゃあ、この椅子に、座って。足を両方の台に乗せてね。
で、この椅子が倒れて脚が自然に開くように動きます。大丈夫、痛くはないからね」
事前に、座面を消毒してくれた椅子に座らされ、恐る恐る脚を乗せる千色。
「カーテン、引きますね。大丈夫、私達だけしかいませんよ」
少しだけ、開いた脚の間が闇に沈んでいる。
私と千色の亡き母親と真剣に見せることを禁じた神父しか知らない秘部。
低い稼働音と共に、徐々にカーテンから下半身だけを露出する椅子がせり上がる。
強制的に脚は全開に開かれて、そして、その全てが、日の下に晒された。
「・・・やはり、な」
「・・・最悪ね、これは」
2人の口から、思わず零れた呟き。
千色の下半身には、男性にあるべきものに、部分的な不足があるのだ。
私は暗闇の中、当初は、触感で、その異常を知る。
日の下で、しげしげ見たのは、ずいぶん後のことだ。
陰茎の先が埋まった形を包茎というのだそうだが、千色はそのタイプ。
(剥けば赤いのが出てくるから、仮性包茎なんじゃないかと思った)
その下に、陰嚢がある筈なのに、千色にはない。
しかも陰茎はとても小さい。女性の親指くらいじゃないかと思う。
その下には会陰があって、男性はその部分には何もない筈なのに
なぜかひきつれたような縦皺がある。
その先には、肛門。
「ごめんなさい、触るわね。・・・あ~やっぱり、これ、縫ったんだわ」
会陰部分の皺を、阿川医師が指先で弄りながら見ている。
「千色くん、痛むのって、このあたりかな?」
下腹を数か所、佐倉医師が押す。千色が呻く声がした。
「ありがとう千色くん、脚、降ろしますね。椅子が元に戻ったら、お洋服着ていいですからね」
千色に声掛けした後で、2人は渋い表情で、顔を見合わせる。
「紹介状、父の名前を借りて、書きますから。これを持って、なるべく早く、家の大学病院を来院して。
千色くんの身体の中で、大変なことが起きてるかもしれないの」
「阿川がいる時が一番いいと思う。お前さ、次の出勤いつ?」
「明後日なら、朝から。来れるなら話も教授に通して検査も準備しておく。明後日、来れるかな?」
千色が着替えている間に、私に二人は表情を変えたまま話す。
「詳しいことは、その検査のあと、きちんと説明します。もしかしたら緊急に手術の可能性もあるの。
大人の保護者の方を、お願いだから連れて来て下さい。同意書に未成年のサインじゃ無理なの」
「手術って・・・なんのですか?」
私の声は震える。
「阿川、そんなの言うなよ。怯えてる。一応、俺達の所見を伝えよう?」
「ダメ!確定じゃないのに、言ってはいけないわ!」
「でも、そこは、確実に言えるんだから、良いんじゃないかな。お前が言わないなら俺が言う」
千色も、戻って来て、私の腕に縋って震える。
「千色くんは、もしかしたら、両方の性を持って生まれているのかもしれない」
「だから、まだ、それは!・・・あくまで、仮説ね?そのつもりで聞いて?」
手近な紙を取って、佐倉医師は簡単な絵図を書く。
「この部分、男には何もついていないのが当たり前なんだが、
千色くんはここに穴があったと思われるんだ。タロウくんって女も経験ありな人?」
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