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”-1~+1” 王子の最愛の人々 ‐14
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マンションに戻って、リビングには行かず、
そのまま、健が、泣き疲れて眠ってしまってもいいように
寝室に連れて行き、ベットに座らせて、泣きたいだけ泣いてもらうつもりで。
いつもみたいに
静さん伝来の、最強アイテム、「お背中ぽんぽん」をしてあげているけれど。
今夜の効きは、頗る悪くて。
思いつくままに、健を慰めたくて、紡ぐ言葉に
泣きじゃくる健への、溢れんばかりの愛おしさに
俺もいつの間に泣いていて。
俺達を支えてくれるような、穏やかな春の雨がその夜に降ったことを
翌朝、服のままで二人とも、泣き疲れて寝てたのを
少し先に目覚めた照れくさそうな、健が、実に可愛らしい声で
「花散らしの涙雨が降ってたんだね。僕、おかげで泣き過ぎちゃった。
爽くんのシャツ汚しちゃったし、お洗濯しなくちゃね」
建設的な、しっかりとした意見を言ってくれて。
ほぼ一月ぶりの健らしい健が戻ったことが、どうしようもなく嬉しくなって。
朝から涙ぐんで、俺の涙を見て、また健が朝から泣くって
わけのわからんことになった。
その朝から、健は、静さん入りポーチを使用しなくなり、
祭壇に遺骨をきちんと安置できるようになった。
いつでも健が手に取れるように、リビングのテーブルには、静さんのエンディングノート。
まだ、話す度に、健は泣いてしまうけれど、
ただ、その涙は、健の心に出来た溜まり過ぎた悲しみの湖を
流してくれるダムになったようで、ひと泣きする度に
健の心を、空っぽになった荒地を潤して、いつかまた情緒の花を芽吹かせる草原へ
戻して行ってくれているようだと、思う反応だった。
お花見で大泣きした後の健は、なんとか4月の声を聞く日に。
お骨と一緒に眠らないで、安定剤や睡眠薬なしで眠ることが出来るようになったんだ。
俺は2日に日付が変わる頃、きっと、健が気付かずに
俺にくれた誕生日プレゼントを、神様に感謝して、眠った。
静さんの訃報がもたらされて以降、久しく出来なかった
愛しい俺の奥さんを抱擁していられることを喜んで。
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