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そん時は、よろしく。
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~奏Side~
・・・りっちゃん、遅いなぁ。
どこ行っちゃったんだろ・・・
屋台の側に作られた休憩室で、ボクはりっちゃんを待ってる。
1時間半くらい待ってる。
なのに。
「帰ってこない・・・」
すぐに帰ってくるみたいな感じで1人でさっさと行っちゃって。
全然帰ってこないじゃんっ!
しかも連絡一つ無いしっ!
電話とかメールとかさ、なんでしないんだろ?
抜けてるって言うか、気にしなさ過ぎって言うか。
って言うか、そもそも何しに行ってるんだろ?
それも伝えていかなかったし。
りっちゃんの様子からして、ボクが一緒に居たらダメな所っていうのは何となくわかったけど・・・。
ということは、もしかしたら危険な所かもしれないってことで。
余計心配だよ・・・
あ~~~~もうっ!!!!!
りっちゃんのバカッ!
ボクがりっちゃんを心配しないわけないって知ってるくせにっ!
『奏チャン、落ち着いて。ね?』
「ヤダ。」
ボクと同じ丸テーブルで呑気にイカ焼きを食べてるバカに、ボクは速攻で冷たく返した。
やれやれ、とばかりに長谷川は息を吐く。
今すぐココの神様へ供物として差し出してやりたい・・・。
神様だって、こんな奴が来たら迷惑だろうけどね。
ボクの悪意が伝わったのか、長谷川は眉間に皺を寄せたが、“気持ちはわかるよ”と、ちまっとイカ焼きを齧った。
分かってるなら、りっちゃんがどこに何しに行ってるかぐらい教えろよ。
「ボク、長谷川さんと初詣デートしてるように見えるの、ヤダ。」
『ヤダとか言わないの。
オレだって二人で居るなら律とのが断然いいもん。』
「だったら、りっちゃんと二人で“用事”を済ませに行けばよかったじゃん。」
『奏チャンを一人にするわけにはいかないでしょ?
人酔いして倒れちゃって誰かに連れてかれちゃったらどーすんの?』
「そうなったとしたら、長谷川さんにとっては好都合でしょ?」
『か~な~でチャ~ン???』
顔を引き攣らせてボクの名前を呼ぶ長谷川に向かって、ボクは舌を短く出した。
子どもっぽいのは承知の上。
というか、そもそも今、ボクが長谷川にしていることは、紛れもなく八つ当たりだ。
でも、このやり場の無い怒りを抑えていられるほど、ボクは大人じゃないし、そんな余裕も無い。
それに。
ボクの正面に座る長谷川は、フランクフルトを食べながらケータイの画面をじっと見ている。
きっと、さっきりっちゃんに送ったメールの返信が来てるか確認してるんだろう。
何も言ってこないってことは、返事は無いっぽい。
ボクの視線に気が付いた長谷川は、“来ないねぇ~”と苦笑いをする。
ボクは、無言で、かつ急いでそっぽを向いた。
ふっ、と“しょうがないなぁ”みたいな息が聴こえたけど、それも無視。
ボクが拗ねてるだけって、長谷川は分かってるだろうから。
敵意からの行動じゃないって、理解してるだろうから。
これが、ボクから長谷川への甘えの形だって、伝わってるはずだから。
「・・・長谷川さんが居たとしても、ボク、連れてかれちゃうかもしれないね?
アンタ、しっかりした顔してる時に限ってヘマするタイプだろうし。」
『言うねぇ~・・・
否定はしないけどさぁ。』
わざとらしく大げさに落ち込む素振りをする長谷川に、ボクは“バカじゃん”と下目遣いをした。
ホントは知ってる。
もし、そんな状況になったとしたら、長谷川はボクを逃がすために全力で誘拐犯と戦ってくれるって。
それくらいにはボクのこと嫌いじゃないって。
ボクが本気で長谷川を嫌ってないって確信してることも、知ってる。
だからこそ、腹が立つ。
「長谷川さん、いい加減白状してよ。
りっちゃん、どこにやったの?」
『なんかそれ、オレがキミから律を取り上げて隠したみたいじゃん。』
「似たようなもんでしょ?
ボクに内緒でコソコソ何かしてるの、知ってるんだからね?」
それに、いつまでもりっちゃん家に入り浸ってるし。
4日だか5日だかに、一旦自宅に帰ったみたいだけど、昨日も泊まってるし。
“取り上げた”ようなものだよ。
まぁ、少しでも長い時間をりっちゃんと過ごしたいって気持ちは分かるけど。
ボクは、さっき長谷川に買ってもらったタピオカ入りのミルクティーを、ちゅーっと飲む。
長谷川も、2本目のフランクフルトをパックから取り出す。
手が震えてないところからして、ボクが勘付いていることもお見通しだったみたいだ。
「・・・気付いてたんだったら、教えてくれたっていいじゃん。」
『オレだって、奏チャンが全~部知っちゃったんだったら言うよ。
黙ってる意味無いからね。
でもキミには、秘密のひの字くらいしかバレてないみたいだから、言わない。』
「ケチっ!」
『それ、間接的に律に言ってるようなもんだよ?』
長谷川の一言に、ボクは押し黙る。
それが事実だってことと、ボクを虐めるために放った言葉じゃないってところが、ムカつく。
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