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練習の日々 5
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じゃあこれはどうかと提案される。
「そうそう、上目遣いで、少し首をかしげてはにかんだように……いや、そうじゃなくて、うーん、まぁこれでも充分か……」
なかなか妥協しなかったが、どうやらこれで良いようだ。
色々と注文をつけられながら、やっとルーシャが納得するような出来になったらしい。
「よし、じゃあ何か困ったことがあったらこれでいけ」
満足そうに何度か頷くと、勢いをつけて立ち上がって俺に手を差し出す。
「休憩は終わりだ。もう少し歩くぞ」
俺はまだ疲れている。
それに先程までの笑顔の練習であまり使っていなかった表情筋も疲れているのだ。
「後少しゆっくりしたい」
「駄目だ。一ヶ月しかないんだからな。お前に合わせてるといつまでかかるか分からないだろ」
ルーシャは早く立てと言わんばかりに手を引っ張って立ち上がらせようとしてくる。
そうだ、こういう困ったときこそ先程の笑顔でお願いすれば良いのではないか?
思いついたら即実行に移してみる。
引っ張られているし、ちょうど良く上目遣いが出来そうだ。
教えられたようにやろうとしたが、表情筋が疲れていたせいか上手く笑えなかった。
その上、引っ張られて手首が痛くなってきた事もあって、自然と眉が下がる。
「後少しだけいいだろう?」
結局首を少しかしげるということしか出来なかった。
そんな俺の顔を見ると、ルーシャがはっと息をのんだ。
「?」
突然止まってしまったルーシャの顔をのぞき込むと、急に顔を強ばらせた。
「先程教えて貰ったことを試そうと思ったんだが、上手くいかなかった。駄目だったか?」
そんな様子を見て失敗だったと思ったが、ルーシャは首を振ると手を離して隣に座った。
「……笑顔と同じくらい効果あるかもな、それ」
「?」
「いや、分からないならいい……ていうか、俺に試そうとするなよ……」
疲れたようにため息を一つ吐く。
「少しだけだからな」と言って寝転ぶと、腕で顔を隠してしまった。
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