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黒い海の中で② 桜side
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「………那雪…大好き…」
瞳を閉じて、幸せだった…あの日々を思い出す。
キスしか恐くて出来なくて、ちょっと那雪を困らせた事とか、
初めての動物園デートで見た…幸せそうな那雪の笑顔。
「…ッ……那雪、好き…ッ…」
俺が欲しいって、欲情に濡れた顔。
心から求めあって…二人で登り詰めて、満たされたあの日。
「な、ゅ…」
他愛もない話をして、笑って…
学校帰りにはゲーセン寄って、アイス食べながら帰って、また明日って。
そんな何もない、ただ…ただ幸せだった日々。
「…あい、たい…ッ…ょ…那雪…」
このまま目覚めなければ“明日”は来ないから…
この目で那雪の事を見て、那雪の名前を呼んで、この手で触れたいから。
「目を…覚ましていいかな…ッ…俺…?」
隣で…涙をながし続ける幼い姿の俺を見ながら笑いかける。
嫌嫌と首を振り続け、泣きじゃくって…
『こわいよ…きらわれたくない…ッ…』
「うん」
『おれ…じぶんかって……。こわいから…にげたいのッ…!』
「うん…そうだよな、俺も恐いよ…。
だけどさ、俺は我が儘だから…“今までの那雪”じゃなくて、“これからの那雪”
が欲しいから…だから、俺は伝えるよ…那雪が大好きだって」
『…ッ…俺…』
「嫌われようが、憎まれようが…ッ…俺はもう、逃げないから。
だから、俺は行くね…」
そっと幼い俺を抱き締めると、腕の中で俺が笑ったような気がした。
ーーー…桜…
微かに、那雪の声が聞こえる。
幼い俺は泣き笑いながら、トン…と俺を上に向かって押し上げていく。
ゆっくりと俺の身体は宙を舞い、上に向かっていった。
「ッ……俺…!」
『おれ…しあわせにね…?』
幼い俺に笑顔で見送られ、俺は上を目指す。
黒い世界の中で、ソコだけが白く光っていて…俺は手を伸ばした。
「那雪…」
今、行くから…待ってて。
「!?」
白い光に触れようとした一歩手前、黒い腕が俺の口を塞ぎ、
ソレは俺の耳許で囁いた。
ユルサナイ、と。
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