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言えないコトバ 桜side
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視界が、白く霞む。
ゆっくりと、那雪の俺を呼ぶ声に答えるため、目を開ける。
「…さ、く…ら…?」
あぁ、那雪が名前を呼んでくれた。
それだけでも、嬉しくて泣いてしまいそうで…
言わなくちゃ…
大好きなんだって。
那雪の両親を殺した、人殺しの息子だけど、貴方の事が好きなんだと。
言わなくちゃ…いけないのに。
「…、……、…」
“那雪”と紡いだ言葉は、音にならずに消えて。
俺は目を見開いた。
何で、声が出ないの…?
目の前で同じように目を見開く那雪を見つめ、俺はボロボロと涙を溢した。
幼い俺と約束したのに。想いを伝えると。
『ユルサナイ』
また、声がする。
幼い俺とは違う、深い憎しみに染まった声。
俺は、逃げていた…見ないようにしていたんだ。この、ーーーから。
『ユルサナイ。ゼンブ、ゼンブ…』
『イワセナイ。オマエノツゴウノイイコトバナンテ…
オマエガ、シアワセニナルナンテ、ユルサナイ』
ーーー…許されないのだろうのか。那雪を愛する、この想いは…
涙が、止めどなく溢れる。
汚れた、汚い自分が…愛を…愛を、求めてはいけなかったんだ。
グラリと揺れる視界で、泣きそうな那雪の顔を見て、俺は意識を無くした。
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