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汚れ
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その日の朝食は、とても豪華だった。
しかしユーリは上の空で、上手く使えなかったフォークがさらにめちゃめちゃな使い方になっている。
「………おい…。」
「は、はい…」
ユーリはびくびくと目だけをアーサーに向けた。
「…………汚い食い方をするな。食事する気が失せる。」
「………ごめ………すみません………」
アーサーは「あ、また心にもないことを言ってしまった」と思ったが、すでに遅い。
ユーリは口をきゅっと結び、音を立てないよう、フォークをゆっくりテーブルに置くと、膝の上で拳を握った。
アーサーは怪訝そうな顔をする。
「……………何故食べない。」
「……おれが…食べてると……汚いから………です…」
ユーリはそう言った切り、黙り込んで俯いた。
「……おい…。」
「………っ………はい……」
「……何も、お前が汚いとは言っていない。」
「…………………………」
「……………こっちへこい。」
「……………………」
ユーリは黙って立ち上がり、俯いたままアーサーの横まで歩く。
アーサーは体を回転させユーリに向かい合うと、ユーリの顎を掴んで顔をあげさせた。
ユーリの薄く水膜が張った目が現れる。
「………何を泣いている…」
「っ………な、泣いてないです……すみません…」
ユーリの声は震えていた。
「何故謝る。」
「……泣くと……ぶたれるから……です…。」
ユーリが俯くと、抑えきれなかった水滴が絨毯に落ち、吸い込まれた。
「……っ…すみません………ゆか……うっ……ふ……ぅ……きたなくなった………」
ユーリは嗚咽を漏らし、必死に涙を堪えようとする。
その姿に、アーサーは大きなため息を吐き、目を手で覆った。
「…………もういい…すまなかった…汚くなどない……泣き止め…。」
「………すみませ……ごめ…なさい…おれ…が……汚いから……うぅ…」
「…汚くなどないと言っているだろう…。」
どうやら、「汚い」と言われたのが相当ショックだったらしい。
「…ごめ…なさい…俺が……俺が……」
ユーリはしゃくりあげながら、アーサーに弱々しく謝り続けた。
「……言いすぎた……あれは……嘘だ。落ち着け。」
「……ひっぐ……ふっ……」
「…すまなかった…。」
アーサーはもう一度そう言うと、ユーリを抱きしめた。
「………ぅ………?」
「とにかく食事をしろ。悪かった。零してもいい。」
思い出した。
こいつはまだ子どもだ。
何も知らない、わからない子どもだった。
教えられていないマナーなどわかるはずがない。
…そんなことも忘れていたのか…
……八つ当たりなんかして……
「……ほら…座れ。今日は私が食べさせてやる。」
「………!」
アーサーはユーリを引き寄せると、あっという間に膝の上に座らせた。
「…ぁ…アーサーさま……おれ……」
「ほら。」
アーサーは降りようとするユーリの腰に手を回し、器用にスープを掬うと、ユーリの口元に運ぶ。
ユーリは一瞬アーサーとスープを交互に見ていたが、頬をピンク色に染め口を開いた。
「…ん……あ…む……」
「……うまいか?」
ユーリはこくんと頷き、満面の笑みで振り返った。
そうだ
この顔だ
この顔が好きだ。
アーサーはゆっくりとユーリの頭を撫で、パンを食べさせてやる。
「…あむ……む……」
ユーリはもごもごと口を動かしながら笑顔で頬を抑えた。
(…食事をしている時はいい顔をするのに…)
アーサーは自分の食事そっちのけでユーリに食事を与え続け、ユーリが食べ終わった頃にはほとんどが冷めてしまっていた。
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