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とくべつなひ
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「アーサーさまは…どうしておれと一緒にいてくれるんですか?」
ちゃぷちゃぷとアヒルで遊んでいたユーリが、ふとアーサーを見上げ言った。
「……………何故だろうな。」
「………アーサーさまにもわからないことあるんですね。」
「………あぁ…まぁな……私も案外知らないことはたくさんある…。」
アーサーもユーリが遊んでいたアヒルをつついた。
ユーリはそれを嬉しそうに見つめ、笑う。
そこでふと思い出した。
「………ユーリの誕生日はいつだ?」
ユーリに新しいおもちゃを買うなら、やはり特別な日に、というのがセオリーだろう。
…と、思ったが…
「……た、た、んじょう、び…?」
ユーリは酷く困惑したような顔をし、必死にその意味を理解しようとしていた。
「…………………………………」
「ぁ、ご、ごめんなさい……!……わ、から…ないです………」
アーサーの沈黙に、ユーリはアヒルを抱えたまま慌てて身を縮こまらせた。
アーサーは大丈夫だ、という意味を込めて優しくユーリの顎を撫でてやる。
(…地下生まれ地下育ち…一応聞いてはみたものの…やはりそんなものは存在しない…か…)
しかしそれでいい。
その方がアーサーには都合が良かった。
「…誕生日というのは…特別な日だ。
その日にはみんなで祝いプレゼントを用意する。」
「………ぷれぜんと…」
それが何かは全く検討がつかない。
が、何となくいい響きだ。
でも。
「そ、れは……おれはたぶん…持ってないです……」
ユーリは俯きアヒルを見つめた。
特別、そんなものは自分にはない。
だから当然、『ぷれぜんと』もない。
「……無いのなら私が決めよう。」
「………え……?」
ユーリはアーサーの言葉に、バッと顔を上げる。
が、珍しく表情を変え優しそうなアーサーの顔にユーリは顔を赤くし再び俯いた。
「………明日にしよう。」
「…………あした………?」
「………明日、だ。
寝て起きて…そしたらお前の特別な日だ。」
「…あした………」
ユーリは嬉しそうな、くすぐったそうな、そんな顔をして手元のアヒルをぐにぐにと弄くった。
「……あした…俺の……『とくべつ』な…日……」
「そうだ。祝って……プレゼントもやる。」
「…………ぷれぜんと……!」
(…それが何なのかは…わかってないのだろうな……。)
でもそれでいい。
それがいい。
1から与えて
1から教えて
(私だけに笑顔を向けてくれ。)
アーサーはそろそろユーリがのぼせないように風呂から出た。
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