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Episode63 side時雨
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「優しい兄弟が居て良かったね。」
今僕は、ちゃんと笑えているだろうか。
精神科医という仮面を被っている時なら、どんな表情でも心境でも作れるつもりだ。
けれどあの時を思い出してしまうと、どうもコントロールが効かなくなる。
素の自分が、顔を出したがってしまう。
『嫌です!お父様!』
今も、目を閉じて記憶を少しばかり巻き戻せば、
直ぐに鮮明に映し出される光景。
最も、思い出したくない情景。
少し前にこれを思い出した時は運悪く一人で、過呼吸を起こした事があった。
目の前にいる、侑君と自分はそっくりだと思う。
僕はあの頃から成長出来ていないから、中身はまだトラウマだらけの汚い人間。
はっと気づくと、侑君が僕を訝しげに見ていた。
今の今まで僕は、一体どんな表情をしていたのだろうか?…侑君を不安にさせていないと良いけれど。
「ごめんね侑君。少し昔の事を思い出してたんだ。」
あ、上手く笑えていない。
まだ、精神科医になりきれていない。
表情や歪な自分を少しでも紛らわせる為、僕は無意味な話をくどくどと侑君にしていた。
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