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15分ほど歩いて、白猫は近所で一番大きな公園へと入っていった。
雛もその後について公園を歩く。
街灯に照らされた夜の公園は、少し怖いような寂しいような、不思議な雰囲気が漂っていた。
暫く公園の中を散策してから、大きな遊具の傍のベンチに、白猫が飛び乗った。
「ここ?」
雛も同じベンチに腰を下ろすと、白猫はすかさずに雛の膝の上で丸くなる。
「よしよし、寒くない?」
野良猫のはずなのに、常に綺麗な体を撫でながらぼうっと空を見上げると、満天の星空が広がっていた。
「あ、すごい…星、綺麗だね」
星座の読み方も、それにまつわる神話も知らない。けれど、その光景に確かに感動した。
静かな公園で、膝の上に心地よい温もりを乗せて。
もしかして、わざとここに連れてきてくれたのだろうか。
僕が落ち込んでたこと、分かってたのかな。
「ありがとう」
そっとお礼を言うと、猫は雛の掌を慰めるように優しく舐めた。
ざらついた感触がくすぐったくて、思わず笑いが漏れる。
「ふふ、優しいね」
心がぽかぽかと温かい。
はず、なのに。
瞳からは大粒の涙が溢れていた。次から次から流れ落ちる涙。頬を伝い、白猫の背中までもを濡らしていく。
「ご、めんねっ」
拭っても拭っても、止まらない。
白猫は、雛にもっと寄り添うように頭をお腹に擦り付けてくる。
もう、だめだ。
人気がないのをいいことに、雛は肩を震わせて泣いた。きっと泣いたのは、嵐との仲が壊れ始めたあの頃以来だ。
ずっと我慢してきた。
自分の気持ちを、遠く遠くに置くように、誰からも見えないように。
弱い自分が、これ以上誰かの足枷にならないように。
「…っ、もぉ…、やだ…っ」
今日くらい、泣いてもいいかな。
誰にも迷惑かけないから。
泣き止んだら、もっと強くなるから。
突然、膝の上でぐるぐると喉を鳴らしていた猫が顔を上げた。
雛もその視線を追いかけて、顔を上げる。
滲む視界に、向こうから歩いてくる人影が見えた。その人は帽子を深く被って、長い脚でゆっくりと近づいてくる。
雛はただ呆然とその人を見ていた。
目の前にその人が立っても、まだ顔は見えない。
「また泣いてる。泣き虫」
懐かしい香りが、雛の胸いっぱいに広がった。
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