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3ー09
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「お、お早う御座い…ます」
心の準備もままならないのに、学校に来ていつかの朝のように最初に部室に居たのは透也さんだった。俺が二番目。
何とか挨拶してみたけど、声が上手く出なくて片言になってしまった。
そんな俺の声に反応してピタリと動きを止める透也さん。
けれど振り返らず、お早うと小さく返された。
凄まじい緊張感の中…返事があった事に少しだけ安堵して隣のロッカーに鞄を置く。
チラリと透也さんを見上げると、真顔過ぎて感情が読み取れない。
重々しい空気に喉が乾き、どうにかしたくて勇気を出して声を絞り出した。
「あの、透也さん…」
「……………」
「昨日は…その、すみませんでした!…俺っ」
「…いいんだ」
静かに遮られた。
驚いて顔を見上げれば、透也さんは此方に視線を向けず…そのまま言葉を続ける。
「お前は悪くない。手を出したのは俺だ…………………悪かった」
「…い、いえ」
こうして互いに謝れたから、きっとまた元の関係に戻れる…そんな気がして、微かな期待に頬を緩める。
けど、その考えは安直過ぎていた。
「だからもう…俺からはお前に近付かない」
…え?
「俺の言った事は忘れてくれ」
何を言ってるんだ透也さ…
「無理に付き合わせて…悪かったな」
そう告げた俺を見つめる透也さんの切なげな笑顔に思考は止まり、立ち去る背中に手を伸ばす事すら出来なかった。
こんな終わりって…あるのかよ。
伝えたい事があるはずなのに。
それなのにどうしても…その言葉が見つからない。
その日を境に透也さんが声を掛けてくる事は無くなり、俺の心には大事な何かが欠け落ち…息が詰まる程の鈍い痛みだけが残された。
03.end
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