アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
その主人、駒鳥
-
「今度、我が社では宝石を取り扱うことになりましてな・・・」
・・・うるさい。
「ウェリントン公爵がまた愛人を囲われたらしいわよ、ご存知?」
・・・臭い。
だから夜会は嫌なんだ。
どうでもいい自慢話。
下品に着飾った香水臭い女たちのくだらない噂話。
低俗で、醜悪で、吐き気すらする。
仕事じゃなければ、絶対に来たくない。
そう、今日の僕は女王の番犬として、女王の憂いを晴らすためにここに来た。
最近、ロンドンでは連続誘拐事件が起きている。
10日で4人被害にあっている。
これがただの誘拐ではない。
狙われるのは決まって少女ばかりであり、拐われた少女は皆闇で違法に売られているのだ。
犯人はいつも犯行当日に予告状を警察に送ってくる。
予告状にはいつも《今夜、原石を頂きに参る。本物であることを願っている。》とだけ書かれている。
闇オークションから元をたどると、一人の男にたどり着いた。
ロスチャイルド男爵、大手宝石メーカーの社長である。
とは言っても、彼の親が1から築き上げた会社をそっくりそのまま継いだだけなのだが。
爽やかな外見とは裏腹に、裏社会では超がつくほどの幼女好きで知られている。そのため、結婚もしていない。犯行動機は、大方、
その性癖が行きすぎた・・というところだろう。
「おや、お嬢様。また壁の花をきめこんでおられるのですか?」
「・・・うるさい。」
わざとらしく“お嬢様”を強調してくる“家庭教師”に腹がたつ。
(クソッ、女装なんて二度としないと決めていたのに・・・)
「せっかくかわいらしい格好をなさっているんですから、もう少しにこやかに笑ってください。」
ピンクのフリルの付いたドレスを着て、仏頂面をしているシエルへセバスチャンが苦笑して言う。
「・・・黙れ。劉はどこに行ったんだ?」
ロスチャイルドがこの夜会に出席するという情報を掴んだ僕は、主催者と接点のあった劉に頼んで、参加させてもらったのだ。
僕はファントム社の社長であり、同時に女王の番犬であるとして、裏社会では顔が割れてしまっている。
そして今回のターゲット、ロスチャイルドが少女好きなので、仕方なく例の・・・ドルイット子爵の件以来ずっと封印していた、女装をすることになったのだ。
「劉様ならあちらに・・・。それより、お嬢様。そろそろ・・・。」
「あぁ。」
奴が一人になるときを狙って話かけなければならない。
(・・・今だっ!)
「セバスチャン、お前はここにいろ。僕が呼ぶまでは来るな。」
「御意。」
ロスチャイルドがテラスへ一人で出ていったのを確認し、グラスを2つ持って追いかけようとしたその時。
「やあ、お嬢さん。どこのお家の子だい?」
今まさにロスチャイルドと接触しようというときに、さっきの自慢話の鼻につく男が話かけてきた。
(ちっ、こんな奴に構ってる暇ないんだ)
「私、どうしてもここに来たかったから、お母様のお友達に連れてきて頂いたの。」
「お母様はどうしたんだい?」
「お母様はあまり体調がよろしくなくて・・・。」
「そうか、それはかわいそうに。おじさんが慰めてあげよう。」
そうこうしてる間に、ロスチャイルドがどこかへ移動し始めた。
(まずい!このままじゃ・・・っ!)
「・・・セバスチャン。」
僕に執拗にベタベタしてくるこの男に聞こえないくらいの、ほんの小さな声でも奴は来た。
ドンッ
パシャッ
「冷てぇっ!」
セバスチャンはわざと男にぶつかり、飲み物をひっかけた。
「おや、失礼しました。大丈夫ですか?」
(坊っちゃん、今のうちに・・・。)
(ああ・・・。)
僕らは目で会話をし、その場をセバスチャンに任せ、ロスチャイルドを追った。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
15 / 21