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心のざわつき
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「お兄ちゃん!お兄ちゃん、めっさ久しぶり!あーお兄ちゃんの匂い~癒される~」
真白の背中に張り付き相変わらず頬をよせスリスリにやにやする真帆。真白の妹だった。紺のブレザーに胸元は赤のリボンでスカートは短い。それでも髪の毛を染めたりしていないようで、真白に良く似ていた。これが噂のもう一人のブラコンの妹か…と佐伯は少しだけげんなりした。佐伯よりももっとげんなりとしている真白は抱きついている真帆の手を外し、体から引っぺがし真帆と向かい合う。
「真帆…タックルするの止めて…死ぬ…」
「ええええ~だって!だって!こんな人混みの中で出会うなんて運命感じるよ!」
「……なに言ってんの…」
「というかー、この人は誰ですか?お兄ちゃん」
真帆は佐伯を見て首を傾げる。それを聞いて真白は焦った。佐伯は今やただの会社の上司ではない。上司であって体の関係まである人だ。ただの上司だと説明するには休日のこの時間この場所で上司と買い物なんて、ふつうはあり得ない。真白が言い淀んでいると佐伯がにっこりといつもの笑顔で真帆に微笑んだ。
「はじめまして。水上の上司の佐伯です。真帆ちゃん…?かな?」
「え!上司さんですか!?こんにちは!初めまして!水上 真帆です!兄がいつもお世話になっています!」
「元気が良くていいね、真帆ちゃん」
「はい!それだけがとりえです!」
満面の笑みを浮かべている真帆だが、それだけが取り柄って…と真白は真帆に呆れた視線を投げた。とりあえず佐伯は真帆に上司だとは告げた。真白はそれに少し安堵したのだが、真帆はやはり疑問に思ったらしく質問をしてきた。
「上司さんと、お兄ちゃん、一緒に買い物とかするんだ?」
真帆は不思議に思ったような顔をしている。やっぱりそこは気になるのかと、真白は内心でまた焦ってしまう。しかし佐伯がまた真帆に微笑み説明をしはじめた。
「水上が料理が得意だって聞いてね、ご馳走してくれることになったんだよ。俺は料理が出来なくて外食ばっかりだからってね」
「ああ、そうだったんですかー!お兄ちゃんのごはん、ホントに美味しいですよ!ハンバーグとかカレーとかグラタンとかオムライスも!」
「そうなんだ、それは楽しみだよ」
「おーい!真帆~!」
「あ、友達が呼んでるんで、失礼しますね!」
女子高生が好きそうな服が並んだ店から、真帆の友人であろう女子高生二人が手を振って呼ぶ。真帆は真白に向きあいニッコリ笑って内緒話をするように顔を寄せた。
「……お兄ちゃん、佐伯さんってすごいカッコいいね…」
「……は?」
「今度、私も一緒にお兄ちゃんの作ったごはん食べたいな」
「え…ま、真帆?」
ぽかんと思わずしてしまう。真帆はそんな真白をみてふふふっと笑い、先程呼んでいた友達の所へとダッシュで向かっていった。真帆の背中を見送る真白はなぜだか心がざわついて仕方なくなった。先程のご機嫌な気分はどこかへいってしまい、ざわざわじりじりと真白の胸の奥を撫で始めた。
「元気な妹だね……真白?」
「…はい。元気だけが取り柄の…妹です」
「なるほどね…」
ざわつく心を隅に追いやり、真白は佐伯と夕御飯の相談をしながら買い物をした。なるべく真帆の事を考えないようにしていたし、佐伯と食品をみてああでもないこうでもないと話しているのは楽しかった。でも心の隅のざわつきがどうしても真白に影を落としていた。
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